自転車事故が急増、コロナで利用増原因か 30~50代の死亡も多く

仁村秀一
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 埼玉県内で自転車事故が増えている。昨年は事故での死者が前年の1・5倍に急増し、交通ルール違反で切符を切られるケースも目立つ。コロナ禍で公共交通機関を避け、自転車を利用する人が増えたことが一因とも考えられ、県警は注意を呼びかけている。(仁村秀一)

 暮れも押し迫った昨年12月28日午前10時45分ごろ、川口市芝塚原の市道で自転車に乗っていた40代男性が後続の軽自動車にはねられ、搬送先の病院で亡くなった。県警によると、男性は車道脇の自転車レーンを走っていたが、何らかの理由で車の進路上に出た模様だという。

 昨年、県内では前年より12人多い34人が自転車利用中の事故で亡くなった。65歳以上が23人と最も多いが、おととし3人だった30~50代が10人に増えた。

 自転車が絡む交通事故では自転車側にも法令違反があることが多い。県警交通総務課によると、昨年自転車に乗っていて事故に遭い死傷した約4800人の中で違反がなかったのは約900人と2割に満たない。亡くなった34人も、うち30人に違反があったという。

 死亡事故は氷山の一角だ。イヤホンをしながらの走行や無灯火走行などの違反を警察官に見つかると渡される赤い警告カード。反則金をとられるものではないが、おととしは43万枚が交付され、2年連続で全国最多を記録した。

 交通違反で赤切符を切られるケースも多い。県警がおととし、赤切符で自転車の違反を取り締まったのは845件で、こちらも過去最多だった。

 交通切符には、比較的軽微な違反なら反則金を納めればいい青切符もあるが、自転車など軽車両は対象外。赤切符は検察への送致対象になる。赤切符に該当する違反や交通事故が3年以内に2回以上あった場合、自転車運転者講習の対象になり、受講命令に従わないと5万円以下の罰金が科される。

 県警交通指導課は「違反行為は大きな交通事故につながる」と改めて交通ルールの順守を呼びかける。

 一方で、歩行者や自動車優先で自転車が走りにくい道も少なくない。県が昨年9月に実施した「自転車の利用に関する意識調査」で「自転車の利用に関して不便だと思う点は」という質問に対し、半数近くが走行環境が整っていないことを挙げた。

 さいたま市は2022年度末までに自転車レーンを200キロまで整備する計画で、20年度末までに155キロが完了した。歩行者や自動車との接触を避ける目的で作られる自転車レーンには、自転車専用のものと、車道混在のもの、歩道内を分離したものがある。

 16年にレーンを設置した路線で、設置前の3年と設置後の3年の自転車事故の平均件数を比べると、25%減ったという。市は今後も、駅や商業施設周辺など通行量の多い路線や事故の危険性が高い路線でレーンを整備していく方針だ。

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 県警の速報値によると、昨年県内で起きた交通事故による死者は118人で、前年より3人減った。1970年の845人をピークに、近年は減少傾向が続いている。年齢別にみると、65歳以上が72人と6割を占め、40代が13人、50代が10人と続く。事故の状況別では歩行中の45人が最も多く、うち道路横断中が31人だった。都道府県別の死者数で埼玉は、神奈川、大阪、東京、千葉、北海道に次いで6番目に多かった。

 県内の人身事故は1万6708件(前年比407件減)、負傷者は1万9873人(同570人減)と、ともに11年連続で減った。

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