虐待やネグレクト(育児放棄)、経済的な理由など、さまざまな事情から、実の親と離れて暮らす子どもたちがいる。こうした子どもを家庭に迎え入れ、養育するのが「里親制度」だ。

 厚生労働省のまとめ(2019年度末)では、児童相談所が保護している全国の子ども3万4791人のうち、里親やファミリーホーム(小規模住宅型児童養育事業)で暮らすのは全体の21・5%の7492人にとどまる。一方、児童養護施設や乳児院が78・5%を占め、2万7299人だった。

 施設では、子どもの養育者が頻繁に代わるため、子どもが特定の大人と継続して安定した関係を築く「愛着形成」がしにくいと指摘される。このため国は、施設ではなく、里親らのもとで暮らす子どもの割合(里親等委託率)を増やそうとしてきた。里親に登録する人、里親のもとで暮らす子どもの数は、近年ともに増加傾向にある。

 児童相談所のある職員は「児童養護施設などで長く暮らす子どもにとって、夏休みや冬休みだけでも家庭で暮らし、交流を持つ経験は重要だ」と取材に話した。

仕事しながら保育園に預けることも

 里親にはいくつかの種類がある。最も一般的なのが「養育里親」だ。実の親から保護する必要がある子どもを、研修を受けて登録した家庭に委託する。

 子どもの親権は実親にあり、姓は実親と同じまま。実親の生活状況や養育能力が改善するまでの委託が基本だ。18歳未満が対象だが、状況に応じて20歳まで延長できる。

 養育里親になるには、子どもを育てられる環境が整っていれば、共働きかどうかや婚姻の有無は関係ない。実子がいても構わないし、年齢も問われない。仕事をしながら保育園に預けることもできる。

 里親になろうとする人の相談窓口は、住んでいる地域の児童相談所になる。児童相談所で面接し、数回の研修と家庭訪問を経て、里親に認定されるかが決まる。

 その後は、保護された子どもとの「マッチング」、面会や外泊などの交流がある。児童相談所から「受け入れが適当」と判断されれば、子どもを迎え入れることになる。

受け入れ期間 10年以上も

 受け入れ期間もさまざまで、10年以上の長期もあれば、数日のこともある。週末や長期休みだけ預かることもできる。

 養育里親には、預かった子ども1人につき一般生活費が乳児以外は月5万2130円、養育里親手当が月9万円のほか、医療費や教育費などが支給される。

 養育里親のほかに、里子を養子とすることを希望する「養子縁組里親」もある。子どもが原則15歳未満の場合、戸籍に里子が「実子」と記載される「特別養子縁組」の制度を適用することもできる。

 また、障害がある子や虐待を受けた子ら専門的なケアが必要な子どもを専門的に受け入れる「専門里親」、親族が里親になる「親族里親」の制度もある。(足立菜摘)