山崎隆之八段、隙だらけの布陣から全軍躍動 顔しかめる菅井竜也八段

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【順位戦Live】▲山崎隆之八段ー△菅井竜也八段【第80期将棋名人戦・A級順位戦】
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【観戦記】A級順位戦5回戦 先手▲山崎隆之八段(0勝4敗) 後手△菅井竜也八段(2勝2敗)

パックマン戦法

 ▲6六歩(図)を見て菅井が座り直した。左手で後頭部を右から左へともむ。開始から10分もたたず、盤上は面白いことになった。

▲9六歩 △9四歩1 ▲7八銀1 △3四歩3 ▲6六歩=図(指し手の後の数字は消費時間〈分〉)

 初手から▲7六歩に△4四歩と突く「パックマン戦法」(歩をぱくっと取らせて逆襲する)を先手番に応用したもので、山崎は過去にも指したことがある。図で△6六同角なら▲6八飛△5七角成▲7六歩△6八馬▲同金△2二銀▲1五角が代表的な変化。そこで△3三飛で互角だが、後手が好んで飛び込む変化でもない。菅井は△3二飛と振った。

 本局の解説者は昨年10月にプロ入りした冨田誠也四段。「本譜の進行は▲7六歩と突かずに駒組みを進める狙いです」と話す。大駒をさばいて細い攻めをつなげる展開を得意とする菅井に対し、山崎は早々の角交換になりづらい形に誘導した。

 初手▲9六歩も効いている。「△7二玉に代えて△7二銀は▲9七香~▲9八飛の端攻めが気になります」と冨田四段。さらに「▲5七銀(指了図)に△3六歩と突けません。▲同歩△同飛は▲2六歩があります。以下△3四飛にも△3二飛にも▲4六銀で、先手が押さえ込めます」。

 山崎が指したのはただの奇襲ではなく、工夫が詰まった序盤戦だった。(諏訪景子)

△3二飛16 ▲6七銀 △6二玉2 ▲5六歩6 △4二銀 ▲7九角6 △7二玉3 ▲4八銀26 △3五歩4 ▲5七銀9

持時間各6時間 消費▲48分 △29分

持ち味を封じる

 解説の冨田四段にとって山崎は、奨励会時代の幹事。「やさしさの中に厳しさがある先生で、盤に向かう姿勢を問われました」と懐かしそうに話す。いまは研究会仲間。研究会では山崎も定跡形を指すそうだ。

 本局の山崎は、前譜から徹底して菅井の持ち味を出させない序盤を目指した。「後手は△3六歩▲同歩△同飛から手順に△3四飛と引きたかったはずで、本譜の△3四飛の局面は先手の狙いが実現しています」と冨田四段。

 菅井は▲4六歩に△4四歩と…

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