ストリート、ジェンダー、NFTアート…美術と「日常」再考の機会に

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編集委員・大西若人
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2021年、日本の美術界にはどんなことがあったのか。美術担当記者が振り返ります。また、美術評論家の岡部あおみさん、美術史家・美術評論家の高階秀爾さん、美術史家の山下裕二さんに注目した展覧会を三つずつあげてもらいました。

2021年のアートシーン

 「新しい日常」なる言葉が唱えられて2度目の年の瀬を迎えている。

 一時的な臨時休館などもあったが、予約制などの方法で多くの美術館が活動を続けた。そんな状況にあって、日常の中での美や、日常と美術の関係を問うような事象が多く見られた。

 コロナ禍で開幕が遅れた石川県・奥能登国際芸術祭や千葉県・房総里山芸術祭などの地域の芸術祭は暮らしに近い場にアートを配する試みだ。海外や大都市圏からの来訪が難しくなって観光という非日常性が減じたとき、ある種の夢想力を通して時代や社会を批評するアート本来の力が出せたのかが問われた。

 日本の芸術祭で生と死を詩的に表現し続けたのが、フランスのクリスチャン・ボルタンスキー。その死去は、改めて日常における美術の意味を考えさせた。

 一方、都市の日常空間でいえばストリートアート。メッセージ性で知られる英国の覆面作家バンクシーの大規模展が、2種類も日本国内を巡回した。ストリートアート出身の米国のカウズの大規模展も東京・六本木で実現。若手の大山エンリコイサムは神奈川県民ホールでの個展で、ストリートアートから着想を得た表現を見せた。

 これらも含め、充実した個展が目立った年だった。

 装丁やポスターという日常的…

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