劇場公開と同時配信・不労所得…濱口竜介監督、ベルリン受賞作の実験

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小峰健二
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 今年のベルリン国際映画祭で次席にあたる審査員大賞(銀熊賞)を獲得した「偶然と想像」が17日に公開された。国際的な評価を高める濱口竜介監督による同作は、内容はもちろん、作り方や届け方もおもしろく、ユニークだ。規模の大きな商業映画ではなかなかできない、ある種の「実験」があったという。

 「偶然と想像」は、それぞれ約40分の3話からなる短編集。予期せぬ三角関係や誤解から生まれる出会いなど、偶然の物語をつづっていく。

「ばかばかしさを強調」

 4時間15分の「親密さ」(2012年)や5時間17分の「ハッピーアワー」(15年)など重量級の作品を撮ってきた濱口監督にしては、軽やかでコメディー的な要素もふんだんだ。自分にかせをかけず、「やりたいことをやる」という素直さが作品からにじみ出ている。

 「そういったところはありますね。確かに詰め込んだというか。内容的にも形式的にも、ストーリー的にも今までやっていなかったことをやりました」と濱口監督は言う。

 スタッフもキャストも少なく、小所帯。商業映画で監督デビューする前から付き合いのあった製作チームで、配給会社も決めずに「習作」のように作り始めた。撮影前には古川琴音さんや中島歩さんらキャストを集め、無感情で何度もせりふを音読する「本読み」を繰り返してもらった。

 「何度も何度も役者さんにやってもらって勘所をつかんでもらえるのはこの体制ならではだったと思う。カット割りも最初から決まっていなくて、役者さんの動きを見ながら決めていく。ワンシーンに対する時間のかけ方も、この体制じゃないとできない。現場で徐々にカメラポジションを発見していく感じでした」

 撮影技法に習作的な要素が感じられるのも、今作で特筆すべき点だろう。俳優がカメラを見ているようなカットを入れたり、高速でギュンと寄るズームを使ったり。最近の映画ではあまり見ないようにも感じるが、それについてはこう語る。

 「ズームをみんながやらなく…

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