学校運営のためにPTAなどからの寄付がどれくらい使われているのか。高松市立小中学校71校のうち、68校で年間に総額計1億円以上が支出されていることが、市議の各校への調査で判明した。学校運営経費は公費負担が原則だが、教材や備品購入、新型コロナウイルス対策に寄付が充てられていた。厳しい市財政が続く中、各学校からは「(公費だけでは足りず)保護者負担に頼らざるを得ない」との回答が相次いだ。

 調査は植田真紀市議が、市立の小学校49校と中学校22校に対して実施し、全校から回答を得た。2018~20年度の3年分について、保護者が支払うPTA会費や教育後援名目とした会費を原資とした支出額や使途を尋ねた。

 小学校では49校中46校で支出があった。およそ半数で毎年100万円以上の支出があり、昨年度最も多い学校は441万円だった。中学校では全22校で支出があり、昨年度の最多校は613万円だった。

 支出内容は多岐にわたる。教科書(少人数担当用)や理科実験用具、図書など児童・生徒の学習に直接関係すると思われるもののほか、机やいす、ロッカー、チョーク、傘立て、清掃用具、印刷関連用品、体育館ワックスなどの備品もあった。また、昨年度はマスクやフェースシールド、アクリル板、体温計など新型コロナ対策用品も目立った。

 学校運営の経費は、学校教育法や地方財政法により、公費で賄うのが原則だ。ただ、「経費」の範囲はあいまいで、文部科学省財務課の担当者は「どの学校にも備えるべき標準的な備品や施設修繕は自治体財源で賄うべきだ。一方、それ以上に充実した教育環境のためにと、PTA側が自発的に望むものであれば(寄付は)問題ない」とする。

 調査の回答からだけでは、寄付が「必要不可欠」な支出に充てられているのか、「よりよい教育環境」のための支出なのかどうかまでは判然としない。だが、各学校からは「PTA費を充てなければ学校運営経費を賄えない。保護者負担を減らすために公費の増額を希望する」「(PTAの加入者が減った場合)対応をどうすればいいのか苦慮している」といった、必要不可欠な支出に充てているかのような回答が相次いだ。

 また、PTAのお金をすぐに使える「第二の財布」としてあてにしている実態も浮き彫りになった。ある学校は「(公費は)購入の手順が手間」と回答。「(PTAからの)寄付という認識はなかった」という回答もあった。市立小の校長の一人は取材に、「PTAの理事会で、こういうものを購入したいとこちらから話して賛同を得て業者に発注する。緊急を要する場合は事後承認のこともある。子どもたちに財政難による不利益を背負わせたくないという思いからだ」とも話す。

 このような高松市立学校の経費調達について、近畿圏の教育委員会の担当者は「任意団体のPTAのお金を、学校が最初から当てにしているならば不健全」と疑問を投げかける。東京都教育委員会は50年以上も前の1967年には、「(私費負担の依存は)義務教育の正常な発展に大きな障害となるので、早急に解決しなければならない」と、各区教委に通知を出している。

 高松市教委は2010年に、今回の市議と同様の調査(09年度分)を実施し、「保護者から多くの支援を受けていたことが判明した」(市教委の担当者)として、翌年度から学校運営にあてる公費を増額した経緯がある。だが、今回の調査の支出総額は、当時を大幅に上回っていた。

 市教委は10年前の調査以降、このような寄付に頼る学校運営の実態は把握していない。

 植田市議は「義務教育は無償であり、本来公費で賄うべきものまで保護者に背負わせてはいないか。市や市教委は現状をしっかり把握し、公費を増やすべきだ」と指摘する。

 今回の調査を受け、市教委の担当者は13日の市議会で、「学校からの相談に応じ、PTAに頼らざるを得ない状況を改善できるよう努めたい」、大西秀人市長は「大幅な財源不足が見込まれ、ただちに学校運営費を大幅に増額することは困難だが、必要経費は適切に予算措置を講じる」と、それぞれ答弁した。