オミクロン株の感染者、欧州で急増 南アでは入院患者が徐々に増加

オミクロン株

ヨハネスブルク=遠藤雄司 ロンドン=金成隆一
[PR]

 新型コロナウイルスオミクロン株を最初に世界保健機関(WHO)に報告した南アフリカや、市中感染が起きている欧州で、感染者が急増している。英国では同株感染者1人の死亡も初めて確認された。専門家は現時点では軽症者が多いと指摘しつつ、感染力の強さに注意を呼びかけている。

 南ア国立伝染病研究所(NICD)によると、13日の新規感染者数は1万3992人で陽性率は31%。2週間前と比べて1日あたりでは6倍超に急増した。南アの研究者グループによると、デルタ株の流行収束後、急速にオミクロン株に置き換わっているといい、12月に抽出調査した61の検体のうちすべてがオミクロン株だったという。また、ワクチンを接種済みのラマポーザ大統領も12日の検査で陽性となるなど、ブレークスルー感染も相次いで報告されている。

 南ア医師会の会長で、感染拡大が顕著な首都プレトリアの開業医のアンジェリク・クッツィエ氏は10日、朝日新聞の取材に「プライマリーケア(初期診療)レベルの話だが」と前置きした上で、陽性者の多くが軽症だと説明。オミクロン株による感染拡大が始まったとみられる11月半ばから12月10日までに、生後4カ月~82歳のコロナ患者計80人を診療したが、「一人も入院には至っておらず、経過観察が必要と判断したのも3~4人程度だ。重症化する人も出てくるだろうが、デルタ株の時とは状況が異なる」と指摘した。

 クッツィエ氏によると、デルタ株による感染が広がった6~8月は重症者が相次ぎ、病院側も逼迫(ひっぱく)した。一方、11月半ば以降に自身が対応した患者の主な症状は筋肉痛、頭痛、のどの痛みや軽いせきが大半を占め、発熱はまれ。10日時点では酸素療法が必要になった患者はおらず、全員が自宅療養しているという。「ワクチン未接種だけではなく、ブレークスルー感染や再感染例も複数診療したが、そのほとんどが軽症だった。ほかの開業医らに話を聞いても同じような状況だった」と説明した。

 ただし、感染者の急増にともない、国内の入院患者は徐々に増加している。NICDによると、13日現在、コロナ陽性の入院患者は約6200人で、1週間前から2600人以上増えた。このうち集中治療室(ICU)に入っている患者は420人という。

 クッツィエ氏は、入院患者の約8割がワクチン未接種者だとし、ワクチン接種の重要性を指摘。感染拡大への対策として、「医療従事者のワクチン接種義務化は一つの手だと思う。それ以外の人々にはワクチンを打ってもらうよう勧め、マスクの着用をより徹底してもらうことが重要だ」と話した。

 欧州でもオミクロン株の感染が増えている。欧州連合(EU)の専門機関、欧州疾病予防管理センター(ECDC)の13日の発表によると、23カ国(英国を除く)で計1686例の感染が確認された。死者の報告はない。ノルウェー(958例)やデンマーク(195例)での感染が目立つ。

 急増しているのが英国だ。最初の2人が11月27日に発表されて以降、13日時点で4713人に達した。

 保健当局は13日、オミクロン株への感染で、イングランドで10人が入院したと発表した。10人は18~85歳で、大半がワクチンを2回接種済みという。また、1人が死亡したことも明らかにした。

 ジャビド保健相は13日の議会で「(オミクロン株ほど)速く感染拡大した新型コロナの変異株はない」と述べた上で「入院や死亡が、感染から約2週間遅れて起きることを忘れてはならない。今後数日から数週間の間に、これらの数字が劇的に増加することが予想される」と語った。同日時点でロンドンの感染者の44%超を占め、48時間以内に主流になる見込みだ、とも述べた。

 政府は免疫を高める3回目のワクチン接種(ブースター)を急いでいる。「新年までにイングランドの成人の全対象者に接種機会を提供する」(ジョンソン首相)と目標を掲げた上で、3回目と2回目の間隔をこれまでの「6カ月以上」から「3カ月以上」に縮め、軍人を接種会場に動員し、接種を担う薬局に週末も働くように呼びかけている。

 朝日新聞の集計では14日午後6時現在、71カ国・地域でオミクロン株の感染者が確認されている。(ヨハネスブルク=遠藤雄司、ロンドン=金成隆一)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

新型コロナウイルス最新情報

新型コロナウイルス最新情報

最新ニュースや感染状況、地域別ニュース、予防方法などの生活情報はこちらから。[もっと見る]