日本や欧米の政府が、軍事に転用される可能性が高い機微技術の流出への対策を強化している。念頭にあるのは、「軍民融合」を掲げて先端技術の軍事転用を進める中国だ。各国は大学や研究機関での規制強化にも乗り出し、技術の保護と発展の両立という難題に直面している。

 公安調査庁関係者によると同庁は今春、「我が国留学歴を有する極超音速分野の中国人研究者」と題した資料を関係省庁に提出した。

 朝日新聞が入手した同資料によれば、日本の国立大学や国立研究開発法人に助教授や研究員などの肩書で所属していた中国人研究者9人は、ジェットエンジンや機体の設計、耐熱材料、実験装置などを研究。これらの分野は米中ロが開発にしのぎを削る極超音速兵器の開発で鍵となる技術だという。

 このうち流体力学実験分野の研究者は、1990年代に5年間、日本の国立大学に在籍。帰国後、軍需関連企業傘下の研究機関で、2017年に極超音速環境を再現できる風洞実験装置を開発。2010年代に日本の国立大学にいた他の研究者も帰国後に国防関連の技術研究で知られる大学に在籍するなど、9人は帰国後、研究機関などに所属したという。

 資料は調査をふまえて、「学術交流の対象分野が軍事転用可能な場合、技術流出などで中国の武器・装備品の性能向上を下支えする可能性」があると指摘した。

 ただ、9人のうち流体力学実験分野の研究者は朝日新聞の取材に応じ、「風洞の原理や中核技術は(日本のものと)完全に異なり、技術転用はありえない」と反論する。経済安保を担当する日本政府関係者は「こうしたケースは不正輸出などの外為法違反とは言えない」と語る一方、「明白な法令違反ではないが、この例に限らず、技術流出が疑われるケースは多々ある」と指摘する。

習主席、「軍民融合」を国家戦略に

 これは一例に過ぎず、日本政府は以前から中国人研究者の動きに神経をとがらせてきた。背景には中国政府の政策がある。中国は2008年、外国の優秀な人材を自国に呼び込む「千人計画」を開始。招かれた研究者は外国人と中国人を合わせて8千人を超え、AIや量子暗号などの先端分野を含む中国の技術革新を支えている。

 さらに習近平(シーチンピン)…

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