洋服のタグには、綿、ナイロン、ポリエステルといった素材の名前が書いてある。「たんぱく質繊維」という表示をいずれ見かけるようになるかもしれない。耳慣れない新しい素材が、アパレル業界で注目を集める理由とは。
映画「スパイダーマン」にも描かれているクモの糸は、たんぱく質繊維のひとつ。重さあたりでは鋼鉄より強く、伸び縮みはナイロン以上と言われる。そんな「夢の繊維」を人工的に再現した企業が山形県鶴岡市にある。慶応大学発のベンチャー「スパイバー」だ。
クモの遺伝子を参考 サトウキビ由来
設立は2007年。クモの遺伝子配列を参考に、クモの糸に似た機能のたんぱく質をつくることに成功した。サトウキビからとれる糖類などを微生物に与え、発酵させる。新素材を「ブリュード・プロテイン」と名づけた。
「製造の過程で生地の風合いを変えたり、吸湿、速乾、消臭などの効果を加えたりできる」と関山和秀代表。15年以降、スポーツ用品大手ゴールドウインと組んでTシャツやセーター、アウトドアジャケットを限定販売した。アウトドアジャケットは1着15万円だった。
価格とともに普及への課題になりそうなのが、認知度だ。
ゴールドウインから売り出した新素材アパレルのタグ表示は「分類外繊維」。スパイバーの関山氏は「たんぱく質繊維、という表示を認めるよう関係機関に働きかけていく」。
量産化に向け、資金調達と設備投資も急ぐ。
昨年は、日本国内のベンチャー企業としては異例の水準である316億円を調達。ことしも399億円を集めた。これらを投じ、タイと米国で新工場を準備しており、近く稼働させる。
足元の売上高は2億円ほどだが、「数年で数百億円規模に拡大する潜在力がある」。スパイバーに100億円を出資した投資会社カーライルの山田和広・日本代表は、そう話す。
■投資家からの期待 背景に「…
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- 【視点】
アパレル業界は、実は環境負荷がとても大きいと指摘されています。染色、加工などの過程で、化学物質を多く使うためです。記事中で指摘されている二酸化炭素の排出だけでなく、水質汚染、働く人の健康被害といった問題もあります。業界でも急速に、環境や人権
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