「内密出産は、法令に抵触する可能性」 慈恵病院に熊本市が見解

堀越理菜
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 熊本市は11日、「内密出産」の受け入れを表明している慈恵病院(熊本市)から書面で出されていた質問への回答内容を公表した。回答では内密出産について、「法令に抵触する可能性を否定することは困難」と従来の見解を改めて示し、国が示している病院への指導もしないと答えた。

 「内密出産」は、予期しない妊娠をした女性が孤立出産をして母子の命が危険にさらされることを防ぐため、病院の担当者にのみ身元を明かして出産し、子どもは後に出自を知ることができる仕組み。慈恵病院は独自に受け入れを表明しているが、実例はない。

 病院は先月28日、「誰にも知られず出産したい」と訴える出産間近の女性を保護していると公表。初の内密出産の事例になる可能性があったため、市に対応方針を尋ねていた。女性は無事に出産後、身元を明かして出生を届ける考えを10日に示し、内密出産にはならない形になった。

 市は10日に病院に回答した。光安一美・子ども政策課長は11日、報道陣の取材に「ケース・バイ・ケース、丁寧に聞き取りながら寄り添って、現行法の中でできることを考えていくにつきる」と述べた。市は昨年、法務省厚生労働省に法的な取り扱いを照会した上で、病院に同様の見解を示している。

 厚労省は市に対し、内密出産が行われる場合には、子どもが出自を知る権利を実親に説明することなど少なくとも4項目を病院に行政指導する必要があるとの見解を示している。これについて市は「内密出産が行われることを前提とした指導は行わない」と回答した。今後も内密出産などに関する法整備などを国へ要望するという。

 慈恵病院の蓮田健院長は、市が指導をしない考えを回答したことについて「予想されたことではあるが残念」とのコメントを出した。その中で、今後は厚労省からの指導を受けることができるのか問い合わせをし、指導がない場合について「秘密で出産したいと願う女性のケースごとに模索を重ねながら対応する」との考えを示した。(堀越理菜)

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