キックボクシングの神童、格闘技界のカリスマ、最強――。様々な異名を持つ格闘家の那須川天心(23)=TARGET/Cygames=が朝日新聞の単独インタビューに応じた。来春のボクシング転向を前に、新たなチャレンジ、東京五輪で活躍したあの人、そしてボクシング界のモンスターへの思いを語った。
2014年7月、15歳でキックボクシングでプロデビューした。寝技もある総合格闘技のリングにも立ち、45戦全勝32KO。戦績は圧倒的だ。
独創的なファイトスタイルも貫いてきた。
「試合内容だったり、動きだったり、格闘技を知らない人でも『なんかこの人、違うな』と思ってもらえることを意識していた」
体を前方に投げ出しながらかかとをたたきつける胴回し回転蹴り、コマのように回転しながら蹴るバックスピンキック。アクロバティックな技の数々に圧巻のスピードで、観客を魅了してきた。
その一方、「敵がいない、と言われる状況」に、近年はうずく思いがあった。
「本当にそれって面白いのかな、と思ったとき、そんなことないな、と」
パンチの練習でボクシングジムには通っていた。そこで「お前ならチャンピオンになれる」と言われたこともある。
思いが膨らみ、2年ほど前に転向を決意した。年末と来春にキックのリングに立ち、以降にボクシングのプロテストを受ける。
「今は名残惜しいとか、そういうのはない。あと2試合、しっかり勝って、次のチャレンジに行く。決めたからにはやるしかない」
テレビのバラエティー番組などにも積極的に出演する那須川。ファッション誌の表紙を飾るなど、リングの外でも活躍した。ツイッターのフォロワーは約55万人、インスタグラムは同86万人。若者からの支持は大きい。
「格闘技をメジャーにしたかった。格闘技は“怖い”というイメージがあると思うが、そういうのはリングの中だけでいい。テレビに出ている人が『よく見たら格闘家だった』という感じで、まず、知ってもらえれば勝ちかな、と」
「ボクシングの方が、ファンの年齢層が高いとは思っていた。僕のファンにボクシングを見てもらえば、ファン層が若返る」
「一般の人から見たらキックもボクシングもそんなに変わらない。キックも総合もボクシングも、みんな格闘技、みんなで盛り上がればいい。垣根を越えて盛り上げられるのは僕しかいない」
キックから転向したボクサーが世界王者となれば史上初の快挙。ただ、格闘技では無敵のファイターも、ボクシングのリングで成功する保証はない。
一つの黒星で、築き上げたイメージが崩れるリスクはある。
「負けることは怖くない。リスクがあっても強い相手と戦いたい。ぼくは挑戦することが好き」
最近、同志といえる若者に出会った。
東京五輪で新種目のスケード…
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