謎多きイシガキフグ、東京海洋大が人工孵化に成功 さかなクンが一役

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中山由美
【動画】イシガキフグの人工孵化に成功した さかなクンら=中山由美撮影
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 世界各地の海に生息するが、詳しい生態は謎に包まれている魚「イシガキフグ」。そんな謎多き魚の人工孵化(ふか)に、東京海洋大水圏生殖工学研究所(東京都港区)が成功した。「イシガキフグの赤ちゃんを見たい」。世界的にも珍しいイシガキフグの人工孵化成功には、同大名誉博士のさかなクンの熱意があった。

 大きな目をした愛らしい顔のイシガキフグは、人なつこくて水族館でも飼育されている魚だ。世界各地に生息する一方で、どの海域で繁殖するかなど、生態は解明されていない。

 そんなイシガキフグに心奪われてきたのが、さかなクンだ。中学生の時、地元にあった小さな水族館で、水晶のように輝く大きな目にみつめられて一目ぼれした。大人になってからは、漁師の網に入ったイシガキフグをもらっては、飼っている。イシガキフグの成魚は全長50センチ前後と大きい。さかなクンが今まで見た最も小さなものでも、全長は23センチあった。

 「成魚でもこんなにかわいい。だったら、赤ちゃんはどんなにかわいいんだろう」。赤ちゃんが見たい――。でも、どの海域で繁殖しているかはわからない。人工繁殖の事例はないかと研究者や水族館の専門家らにも尋ねて探したが、見つからなかった。イシガキフグは小さいほど謎に包まれていることがわかった。

 「だったら、繁殖できないだろうか」と思い立ち、同大水圏生殖工学研究所の森田哲朗准教授に協力をお願いし、7月から共同研究がスタートした。

 千葉県館山市にある同大の飼育実験施設で始まった共同研究。さかなクンは飼っていたフグを提供し、館山の漁師も協力して20匹以上が集まった。水槽で様子をみたが、メスが卵を産んでもオスが精子をかけず、自然繁殖はかなわなかった。そこで、8月下旬、森田准教授は産卵間近のメスの体内から卵を出し、オスの精子をかけたところ、9月3日、約8千匹が孵化した。12日にも卵がとれて、凍結保存していた精子を解凍して使ったところ18日には約2千匹が孵化。10月3日には約2万3千匹の孵化に成功した。魚の生殖幹細胞の研究を続ける森田准教授だが、イシガキフグを扱うのは初めてだった。「凍結精子でも人工授精できたことは意義深い」と話す。

 フグの展示数が世界一という…

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