地方で人口の減少が続いている。政府や自治体が「地方創生」の旗を振ってみても、若い女性らが地元を離れて東京圏に向かう流れに歯止めはかからない。なぜなのか。
「会社の受付に男性が座っていると違和感を感じる」「体力的にハードな仕事を女性に頼むのは気が引ける」「斬新なアイデアが欲しいときは若い人に頼むべきだ」
先月初め、東北地方の企業の管理職ら約20人が、こんなチェックリストと向き合っていた。
地元のシンクタンク、東北活性化研究センターと21世紀職業財団が、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)をテーマにした勉強会をオンラインで開いた。参加者たちは、自社が性別や年齢などの固定観念で働きにくい職場になっていないか、話し合った。
東京圏(1都3県)に向かって東北などの他の地域から転出したり、いったん転出した後に地元に戻ったりした全国の18~29歳の女性約2300人を対象に研究センターは昨年、調査を実施した。
その結果、地元を離れる理由で最も多かったのは「やりたい仕事や、やりがいのある仕事が地方では見つからない」。全体の6割近くを占めた。
拡大する2014年9月、地方活性化対策の司令塔となる「まち・ひと・しごと創生本部事務局」の看板を掲げる当時の安倍晋三首相(右)と石破茂地方創生相=東京都千代田区、代表撮影
2014年、当時の安倍政権は地方活性化を重要な課題と位置づけ、「地方創生相」を新たに設けた。菅政権と岸田政権は、これを引き継いだ。現在の地方創生相である野田聖子氏は、初代の石破茂氏から数えて7人目だ。
政府は、地方創生を目的とした交付金を新設したほか、地方大学の振興策や、先端技術を生かす「スーパーシティ構想」などの施策をとってきた。地方自治体も移住の促進策や子育て支援策に取り組んできた。
しかし、地元を離れて東京圏などへ向かう人の流れは止まらない。総務省の住民基本台帳の人口移動報告によると、14~20年の合計で県外への転出者が転入者を上回った道府県は40に上る。
とりわけ流出が目立つのは女性…