衆院選は31日投開票され、福井1区は稲田朋美氏(62)が6選、福井2区は高木毅氏(65)が8選を果たし、公明推薦の自民前職で2議席を独占した。1、2区とも唯一の野党候補として立憲の野田富久氏(74)と斉木武志氏(47)が立ち、コロナ禍で傷んだ生活の立て直しや、原子力政策をめぐり論戦を展開した。

1区 稲田氏 知名度生かし6選

 自民前職の稲田朋美氏が高い知名度を生かし、野党統一候補の挑戦を退けて、6選を果たした。

 稲田氏は野党候補が一本化したことを受け、「非常に厳しい選挙戦になっている」と終始強調。各報道機関の情勢調査で優位が報じられても、引き締めを続けた。個人演説会でも、「自衛隊を解消して福井と日本を危うくしようとしている共産党と、票のためだけに手を組んでいる勢力に、保守王国の議席を渡すことはできない」と呼びかけた。

 農村部にも細かく選挙カーを走らせてスポット演説を繰り返し、夜は個人演説会を連日開いて政策の浸透を図った。

 新型コロナ対策については、自公政権が感染者や死亡者を欧米より低く抑えてきたと強調。今回の選挙では、コロナ後の社会のあり方が問われているとし、福井県と県医師会が連携して臨時の医療施設を設置するというシステムを、全国に広げることも提唱した。

 また、景気対策として、大胆な財政出動を政府が予定しており、福井をはじめとする地方経済も支えていくと説いた。コロナ禍でしわ寄せを受けたシングルマザーや非正規雇用の女性らへの支援の必要性にも言及。自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)問題を受けて防衛相を引責辞任した経験から、「本当に困っている人の気持ちがわかった」として、「すべての人に優しい国」を目指すと訴えた。

 共産党が候補を取り下げたことで、野党統一候補になった立憲新顔の野田富久氏。「アベノミクスで大企業や資産家はもうけにもうけたが、国民生活は困窮して貧富の格差が広がった」と、9年にわたった安倍・菅政権を批判。コロナ禍で影響を受けた事業者に持続化給付金を復活させることや、消費税を5%に下げて景気回復を図ることなどを主張した。

 福井市議を3期、県議を6期務め、福井1区のうち福井市では一定の知名度があったが、旧坂井郡や奥越など4市1町は初めての地域。選挙期間中に個人演説会は開かず、顔と政策の浸透に専念したが、前職の厚い壁は崩せなかった。(堀川敬部)

2区 高木氏 原発活用訴え8選

 与野党一騎打ちを制し、自民前職の高木毅氏が8選を決めた。

 衆院解散の14日付で国会対策委員長に就任。「これからこそ皆さんの思いを受け止め、実現させる仕事ができる」と、政権与党の要職をつかんだ強みをアピールした。選挙期間中の個人演説会には、市町の首長や議員、推薦した公明党の議員らが応援に駆け付けた。推薦団体は約260にのぼり、組織を固めて支持を拡大した。

 全国最多15基(廃炉作業中含む)の原発が立地する選挙区の特性を踏まえ、原子力政策の訴えにも力を入れた。「再生可能エネルギーも必要だが、原発がないと生活や日本経済が成り立たない」とし、再稼働やリプレース(建て替え)を進めると主張した。

 22日に閣議決定された国のエネルギー基本計画に、新増設やリプレースの記載が見送られると、現行ルールでは最長60年までとなる原発の運転期間について、「最長60年に科学的根拠はない」と批判。原子炉がもろくなっていないかどうかなど、個別に安全性を確認したうえで、「長く使うことをやっていく」と運転期間の延長に意欲を見せた。

 ほかにも、新型コロナウイルス対策として国産ワクチンや治療薬の開発、北陸新幹線敦賀開業を見据えた受け皿作りと新大阪への延伸、防災・減災対策の「国土強靱(きょうじん)化」、拉致問題の解決などに取り組むとした。

 2017年の衆院選で高木氏に約2万5千票差で敗れ、比例復活した立憲前職の斉木武志氏。今回は共産党が候補者を立てず、実質的に野党統一の候補となった。連合福井や市民団体「ピースふくい」などの推薦を受け、細かく地元をまわった。

 原発については、「いくら60年運転できたとしても投資を回収できない」と、産業としての将来の不透明さを指摘。次世代バッテリーや水素といった新たなエネルギー産業を地元に誘致するべきだと説いた。

 また、「福井の最大の課題は人口減少」と強調。地元を離れた若者が福井に帰ってきたくなる仕組み作りの必要性を訴え、奨学金の返済免除などの政策を進めるべきだと述べた。

 新エネ産業の誘致は、そうした若者らの雇用の受け皿にもなるメリットがあるとし、国内で原発立地の動きが出た1950年代初め以来70年ぶりの好機と呼びかけたが、原発推進派の高木氏に及ばなかった。(佐藤常敬、小田健司)