一票の重み、若者が考えるヒントに 町の本屋さんに聞いたオススメ

有料記事2021衆院選

小若理恵
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 政治や選挙って難しい――。そう思っている若者は少なくないはず。日々多くの本と接する書店員に、衆院選を考えるきっかけになるオススメの1冊を教えてもらいました。本をヒントに、一票の重みを考えてみませんか。(小若理恵)

 売り場13坪、大阪市中央区の「隆祥館書店」。町なかにある小さな本屋は、切り盛りする店主の二村知子さん(61)の目利きと情熱で、大型書店やネット書店を上回る販売を記録した書籍が何冊もある。その二村さんが薦めるのは、意外な1冊だ。

 「スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む」(新評論、税込み1980円)。明治大学教授の鈴木賢志さん(政治経済学)が、スウェーデンの小学校高学年の子どもが使う社会科の教科書を翻訳、解説した。「社会」「政治」「法律と権利」など6章で構成され、鈴木さんのゼミ生がどのように教科書を読み解いたのかが書かれている。

 スウェーデンの国政選挙投票率は2014年で85・8%。二村さんは「主権者意識の高さの背景を示す答えがこの本につまっている」と話す。初版は16年。「何で社会がよくならないのかな」と考えた時に出会った1冊だったという。

 衝撃だったのは「法律や規則は変わる」と教科書に書いてあることだ。「日本では法律は守るもの。時代に合わなくなれば、『おかしい』と声を上げていいという教育がされていない」と語る。日本では校則で下着の色や髪形まで決められることもあり、変えるのは簡単ではない。ましてや選択的夫婦別姓同性婚など法律の改正を求める声が高まっても、国会ではなかなか議論が進まない。

 「メディア」の章では、「あなたも影響を与えることができる」として、「あなたの友人や親類から、署名による支援を集めましょう」「フェイスブックでグループをつくりましょう」「人々を集めてデモを行いましょう」「責任者の政治家に、直接連絡を取りましょう」と、子どもたちに教えている。

 二村さんは「小学生のうちからこんな教育がなされていたら、若くても『社会を動かすのは自分だ』と思えるはず」と話す。教師や親だけでなく、政治家にも読んで考えてもらいたいという。

選挙権、手にする前に」

 大阪府茨木市で127年続く書店「堀廣旭堂(ほりこうきょくどう)」。旧制中学卒業までを当地で過ごした文豪・川端康成も書籍を買い求めた老舗だ。家業を守る堀竜一郎さん(30)は、ジャーナリスト池上彰さんの「14歳からの政治入門」(マガジンハウス、税込み1430円)を薦める。

 「政治ってそもそも何だろう?」「選挙ってどういう意味があるの?」など7章。「なぜ、投票に行かないと不利になるのか?」「民主主義は自分たちが主人公」など136のテーマがあり、1ページごとに読み切れるのが特徴だ。

 堀さんは「ページごとにさくっと読めて、とにかく言葉がわかりやすい」。政治に興味を持てない若者にもぴったりだという。

 特に「『政治活動』は14歳でもできる」のページがオススメだ。選挙権を持つ18歳に満たなくても、候補者や政党の公約を読み比べたり、デモや集会に参加したりすることができる、と書かれている。「多感でいろいろなことを吸収できる『14歳』が肝。選挙権を手にする前にぜひ出会ってほしい1冊です」

 米カリフォルニア州で中古車販売の仕事をしていた堀さんは、3月に帰国して家業を継いだ。米国では大統領選で、SNSを使った選挙運動や郵便投票により、若者の政治への関心が高まったのを目の当たりにした。

 「どうせ投票しても変わらない」という政治への不信感を断ち切るのは有権者自身だと考える。若い人たちが衆院選の投票を考えるきっかけにしてほしいという。

国会議員に疑問ぶつける

 大阪市北区の「MARUZE…

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