強権政治に訪れる幕切れの予兆 指導者は感じているのか
日曜に想う ヨーロッパ総局長・国末憲人
ブダペストから車で西に1時間弱、フェルチュートはハンガリーのごく平凡な農村である。人口約1700人で、トラックが行き交う街道沿いに民家が点在する。その1軒で、元調理員の女性コルマイ・ユリカさん(59)が、ビッキーの愛称を持つ同級生男子の思い出を語った。
「賢くて、要領が良くて、成績は1番だけどいたずら好き。13~14歳の頃、好きな女の子の自宅に塀を乗り越えて忍び込んで見つかったこともあったね」。将来はプロのサッカー選手かジャーナリストを夢見る少年だったという。
ビッキーは首都の大学に進学した。ハンガリーはその後、社会主義から民主化、欧州連合(EU)加盟と、激動の時代を経た。故郷にとどまったコルマイさんがビッキーと再会したのは数年前だという。村のスポーツ施設の落成式で、最前列に座ったコルマイさんの前に、彼が来賓としてやって来た。
「やあ、ビッキー」
声をかけると、男が応じた。
「やあ、ユリカ」
オルバン・ビクトル首相(58)である。
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現在の欧州で、オルバン氏ほ…
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