鉄鋼の町から消えた編集室 ローカル紙元編集長、対話重ね築いた再興

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論説委員・沢村亙
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現場へ! 米ローカルメディアの挑戦①

 薄暗い大部屋の柱という柱にかかる時計が、新聞社の編集室だった面影を刻んでいた。

 米オハイオ州ヤングスタウンに拠点を置く新聞ビンディケーターが2019年9月、他州の新聞チェーンに「身売り」された。新聞の名前は残ったが、離れた町で編集・印刷されることになった。約40人の記者は解雇された。創刊から150年間にわたって親しまれた「顔」を突然失い、ヤングスタウンを中心とするマホニング郡には衝撃が走った。

 売却直後、同紙コラムニストだったバートラム・デスーザ(71)は人気(ひとけ)の消えた編集室で語った。

 「新聞は、紙でできた商品ではない。地域社会の日々の歴史なんだ」。もう一つ、重要な役割がある、とデスーザは言った。「権力のウォッチドッグ(監視役)を果たすこと」。マフィアが絡んだ汚職の追及キャンペーンに力を入れた。選挙報道にも定評があった。

 「推薦する候補者を発表した…

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