孤独な大横綱 「この国を愛してる」 白鵬が寄り添った3・11

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抜井規泰
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 どれほど多くの人たちに囲まれていても、白鵬は孤独だった。

 モンゴルの先輩横綱・朝青龍は、2010年の初場所後に知人への暴行事件が発覚し、引退に追い込まれた。

相次ぐ不祥事 角界背負った一人横綱

 この直後、角界を次々と不祥事が襲う。テレビに映る砂かぶり席での暴力団の観戦問題。そして、現役大関だった琴光喜らの解雇に発展した野球賭博事件――。10年7月の名古屋場所は天皇賜杯(しはい)や内閣総理大臣杯を含む外部表彰を全て辞退。当時の武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)は辞任に追い込まれ、桟敷席はガラガラになった。地に落ちた大相撲人気の回復は、一人横綱の白鵬に託された。

 相撲の取り口も私生活も「やんちゃ」だった朝青龍に対し、白鵬は優等生のように白星を積み重ねていった。

 10年の初場所14日目から11月の九州場所2日目に稀勢の里に敗れるまで、連勝記録は双葉山に次ぐ史上2位の63まで伸ばした。

運命の3・11

 だが、人気が戻りつつあった相撲界を、さらなる不祥事が襲う。翌11年2月、八百長事件が発覚。直後の春場所は中止となり、迎えた3月11日――。

 その日は、白鵬の26度目の誕生日だった。不祥事続きを嘆き、白鵬は投げやり気味にこう言った。「もう引退するんじゃないか」。その数時間後に、東日本大震災が起きた。

 約3カ月後、相撲協会は東北…

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