ワクチン承認なぜ遅れた?制度見直しへ 安全性とスピード両立課題

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市野塊
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 政府は、ワクチンの承認審査のあり方を見直す方向で近く本格的な検討を始める。新型コロナウイルスのワクチンの承認が欧米から2カ月ほど遅れたことが背景にある。これまでよりも迅速な承認をめざすが、安全性との両立が最大の課題だ。

欧米から2カ月遅れの承認

 新型コロナのワクチンは欧米では昨年12月に米ファイザー製などの使用が認められ、接種が進んだ。

 一方、日本で新型コロナのワクチンが初めて承認されたのは、ファイザー製で今年2月。5月に入り、米モデルナ製、英アストラゼネカ製が続いた。いずれも、海外で販売が認められた医薬品について、国内の審査を迅速に進める「特例承認」が適用されたが、それでも欧米から2カ月遅れになった。

 遅れの理由の一つと指摘されているのが、厚生労働省が国内の治験データの提出を企業に求めたことだ。審査を担当する医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、ワクチンの有効性や安全性には人種による差もあるとして、海外で有効性が認められたワクチンでも、国内でも治験が必要と判断した。

国内での追加治験はなぜ必要だったのか

 一般的にワクチンは健康な人にも広く接種するため、高い安全性が求められる。日本では過去に接種後の副反応などで訴訟が相次いだ経緯もあり、安全性への意識が強いと指摘されている。今回は「m(メッセンジャー)RNA」など新しい技術が使われ、慎重な扱いを求める声もあった。

 海外に拠点を置き、世界を広く市場ととらえるメガファーマ(巨大製薬企業)から購入するという事情も影響した。ファイザーは海外で4万人あまりを対象にした臨床試験(治験)の結果をもとに昨年12月に承認申請。だが、アジア人のデータは少なく、中でも日本人に限定して調べてはいなかった。このため、日本人160人を対象にした国内の治験データを同社が今年1月末、追加で提出。その後、承認された。

 だが、パンデミック(世界的大流行)の中、海外で有効性が認められていれば国内治験を不要としていいのではないか、との意見も政権内にある。

 国内治験を求めるかどうかは、PMDAの判断で決めることができる。法改正などは必要なく、現在の制度でも省くことは可能だ。厳密な手続きを踏む治験を増やすのは、企業にとって負担が大きい。厚労省幹部は「大規模治験のデータがあるのに、さらに国内の治験データが本当に必要とするのか、ワクチンの安全性と審査スピードのバランスをどう考えるのか、検討する意味はある」と話す。

■日本は米国のEUAも参考に…

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