2030 SDGsで変える
江戸時代などに活躍した近江商人が大事にし、関西の企業などが受け継ぐ「三方よし」の精神が注目されている。売り手だけでなく、買い手や世間の利益にも配慮するもので、国連のSDGs(持続可能な開発目標)に通底する考え方だからだ。ビジネスの持続可能性を追求した先駆者から学べることは。(箱谷真司)
日本海に面した京都府京丹後市。閑静な住宅街にある木造の古民家では、1台の西陣織の織機がシャカシャカと音を立てていた。1904年から続く西陣織の機屋、浜岡均さん(75)の自宅兼作業場だ。
古墳時代が起源で日本最古の伝統産業とされる西陣織は、優れたデザイン性で知られ、織機の種類によって表現できる模様の繊細さが異なる。浜岡さんが使う織機は「1800口織ジャガード」と呼ばれ、針の数が多く、一般的な西陣織の4~9倍の細かさで織れる。ゴッホの「夜のカフェテラス」や葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」など、世界的な名画も忠実に立体的に再現できるという。
約50年前から機屋として働く浜岡さんは「この織機のおかげで表現の幅ができ、西陣織の良さを伝えられる」と言う。和装をする人が減る中、高品質な掛け軸などの作品が収入源の一つになっており、こうした織機は後継者育成にも欠かせないという。ただ、織機は高額で、浜岡さんが使い始めた約30年前でも1台3千万円以上。管理費もかかるため、本来なら小規模な機屋が手を出すのは難しい。
そんな織機を無償で貸しているのが、着物などを扱う専門商社のツカキグループ(京都市)だ。専属契約する9軒の機屋に16台貸し出し、故障時の修理費も一部負担する。
1台3千万円の織機、ツカキが無償で貸すわけは?
1867年に近江商人が創業…
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