「シスターフッド」で時代を生き抜く ブレイディみかこさんに聞いた

朝日地球会議2021

聞き手 編集委員・秋山訓子
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 英国在住のコラムニストのブレイディみかこさんは、女性が社会に対して異議申し立てをし、政治に加わって影響力を持っていく様子をいくつもの作品で描いてきました。これからは「シスターフッド」(女性同士の連帯)や「共感」が問われてゆくと語ります。時代を生き抜くヒントを聞きました。

 ――ブレイディさんは、「女たちのポリティクス」という本で、各国の女性リーダーたちについて取り上げました。

 「今から100年以上前、女性は政治に参加する権利を得るために身体をはり、命をかけて闘いました。その様子を『女たちのテロル』という本に書きました。その後、女性も参政権を得て立候補できるようになり、世界各国で多くの議員や大臣、首相も誕生。女性たちの政治参加の形も次のステージに移りました。そこで政界の様々な女性指導者たちについて考察したのです」

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ブレイディみかこさんは、10月17~21日にオンラインで開催される朝日地球会議に登壇します。参加費は無料。事前登録が必要です。

――政治を志す女性も増え、米国下院では女性が史上最多になるなど、裾野も広がっています。

 「英国で2019年に行われた総選挙で女性候補者は、過去最多を記録しました。米国下院のアレクサンドリア・オカシオコルテス議員など、少し前では考えられなかった非常に若い女性リーダーたちも誕生しています」

――女性政治家の進出で、想定されていなかった事象もあらわれているようです。

 「女性政治家へのハラスメントが深刻化しています。セクシュアルハラスメントに加え、SNSなどネットでの中傷もひどい。英国の国会では調査委員会を設けています。ハラスメントに加え、家庭と仕事の両立など、女性は男性よりも個人的なことで困難を抱えることがあります」

――どうしたらそういう困難な状況を切り抜けられるでしょう?

 「シスターフッドに救われることも多いのではないでしょうか。英国のスコットランド国民党の女性党首、ルース・デヴィッドソンが2019年に育児や家族のために党首を辞任しました。そのとき、やはり育児で仕事を辞めた経験のある女性ジャーナリストがデヴィッドソンの心情を思いやる記事を書きました。ママ友がカフェで紅茶でものみながら、『あなたも大変ね。お互いがんばろう』と肩をたたき合っているようなイメージです」

――日本の政界でも、女性の問題に女性議員たちが連携して取り組んだ例があります。

 「ただ、シスターフッドが共感ベースの連帯で終わってはまずい。自分の足が合わない(共鳴できない)相手でも『他者の靴を履く』ことが大切です。自分という個に立脚したうえで相手の考えや感情を想像する能力が必要です」

――日本は同調圧力が高く、個を確立するのが難しい社会ではないでしょうか。

 「個を取り戻す必要があると思います。日本の人たちは組織への従属性が高く、組織のための個になっている面もありますよね。自分が自分を自由に生きているという核が大事です。自由な個人が、他者の状況を想像し、理解しようと立場を超えてシスターフッドで支えていく。それが女性が政治の場で活躍する鍵ではないでしょうか。それでこそ分断を乗り越えられるし、難しいこの時代を生き抜いていけるのだと思います」(聞き手 編集委員・秋山訓子)

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