新型コロナ、変異も呼び名も「想定外」 ギリシャ文字使い切ったら?

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野口憲太
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 次々と現れる新型コロナの変異ウイルス。当初「インド型」と呼ばれていたものが「デルタ株」のように、ギリシャ語のアルファベットが使われるようになった。8月に世界保健機関(WHO)が新たに「ミュー株」を指定し、24個のリストの半分が埋まった。背景にはどんな事情があり、アルファベットを使い切ったらどうなるのか。

 「汚名を着せることや差別につながることを避け、コミュニケーションしやすくするため、当局やメディアが新しいラベルを使うことを推奨する」

 WHOは5月31日付で、4種ある新型コロナウイルスの「懸念される変異株(VOC)」について、新たにギリシャ文字を使った呼び名をつけた。

 WHOは、変異株を名指しする際に、科学者が使う「B.1.1.7」などの呼称を用いてきた。「B.1.1.7」は、英国で報告され、いまは、アルファ株と呼ばれる変異株だ。

 ただ、一般の人にとっては難解で言いづらく、覚えにくい。報道などではわかりやすさのため、最初に変異株が見つかった国や地域を使って「英国型」などと呼ばれることが一般的だった。しかし、別の問題が生まれる。誤解や偏見だ。

 最初に見つかったからといって、その国で変異株が生まれたとは限らない。発祥地のようにとらえられ、その国にルーツのある人が差別される懸念もある。もし変異株を見つけた国などが発表を控えたら、対応の遅れにつながりかねない。

 国立感染症研究所の齋藤智也・感染症危機管理研究センター長は「技術が進み、ウイルスの遺伝情報のわずかな変化も、ほぼリアルタイムで追えるようになった。逆に、連続的に変化しているウイルスをどう分類し、どう呼ぶかということが課題」と話す。

 日本感染症学会理事長の四柳宏・東大医科学研究所教授(感染症学)は、「研究者の立場からは『どこで見つかったか』は、ウイルスの広がり方を推測するために非常に大事な情報」としたうえで、「当局やメディアなど情報を発信する側も、呼び方に注意を払う必要がある」と話した。

 9月2日現在、WHOが定めるVOC4種と、これに準じる「注意すべき変異株(VOI)」5種にギリシャ文字の名前が割り振られている。一度VOIに指定されて名前がついた後に除外された3種も含め、すでに12個のギリシャ文字が使われている。

 24個の文字がすべて使われた場合、WHOは「ほかの名前のリストが検討される」としている。WHOの専門家は8月、英テレグラフ誌のインタビューに、次の名前として星座を使うことを検討していると明かした。「おひつじ座株」や「オリオン座株」が生まれる日も近いかもしれない。

デリケートな呼び名、よく聞くあの病気でも

 ウイルスや病名をどう呼ぶのか。それはとてもデリケートな問題だ。

 20世紀はじめに世界で猛威をふるった「スペインかぜ」はスペインが起源ではない、と考えられている。第1次世界大戦中の当時、中立国で自由な報道がされていたスペインで早くから報告があったことが、命名の由来とされる。

 日本脳炎は1871年に日本…

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