北朝鮮「新型巡航ミサイルの発射に成功」と報道 米韓への牽制狙いか

ソウル=鈴木拓也、ワシントン=園田耕司、北京=高田正幸

 北朝鮮朝鮮中央通信は13日、北朝鮮が11、12の両日に新型長距離巡航ミサイルの試射に成功したと報じた。巡航ミサイルの発射は国連の安保理制裁決議違反にあたらないが、報道が事実ならば日本を射程に収めるため、日本政府は懸念を強めている。

 北朝鮮ミサイル発射を公表したのは、今年3月に短距離弾道ミサイルを日本海に向けて発射して以来となる。同通信によると、発射された巡航ミサイルは楕円(だえん)や8の字の軌道を描き、発射から7580秒(約2時間6分)で1500キロ先の標的に命中したという。試射は成功し、新たに開発された高効率のタービンやミサイルの飛行操縦性、命中正確性が設計通りの成果を出したと報じた。発射や落下の地点には触れていない。日本政府によると、日本の領海や排他的経済水域(EEZ)への飛来は確認されていない。

 同通信は、今回のミサイル発射朝鮮労働党政治局常務委員の朴正天(パクジョンチョン)前軍総参謀長らが立ち会ったとしているが、金正恩(キムジョンウン)総書記の動静は伝えていない。朴氏は「国防部門が成し遂げた画期的な成果」と評価した。

 同通信はまた、戦略兵器である長距離巡航ミサイルの開発は、「兵器システム開発5カ年計画」の重点目標と強調。数十回の地上噴出試験や操縦誘導試験を経て、試射に至ったとした。

 加藤勝信官房長官は13日の記者会見で、「1500キロを航行するミサイルの発射が事実とすれば、日本を取り巻く地域の平和と安全を脅かす」とした。米インド太平洋軍は12日発表の声明で、「北朝鮮が引き続き軍事計画を進展させ、隣国や国際社会に脅威を与えることに注力していることを明確にあらわすものだ」と非難した。声明ではまた、「我々は引き続き状況を注視し、我々の同盟国・友好国と緊密に協議していく。米国が韓国、日本を防衛するという誓約は不動のものだ」と強調した。

 韓国では、北朝鮮が巡航ミサイルに搭載可能な核弾頭の小型化に成功すれば、重大な脅威になると指摘する専門家もいる。ただ、今回の発射が安保理制裁決議にも違反しないことから、米韓を牽制(けんせい)しつつ、過度な刺激を避けたと見る向きが強い。

 北朝鮮に詳しい梨花女子大の朴元坤(パクウォンゴン)教授は「米国だけでなく、来年2月に冬季五輪が控える中国の懸念を招くような事態は避けたいはず」と分析する。8月に正恩氏の実妹の金与正(キムヨジョン)党副部長が米韓軍事演習に対し、「必ず代価を払うことになる」との談話を発表していることから、巡航ミサイルの発射で「つじつまを合わせた」とみる。

 中国外務省の趙立堅副報道局長は13日の定例会見で、北朝鮮の巡航ミサイルの試射について問われ、「中国は一貫して朝鮮半島の平和と安定を擁護し、対話によって問題解決すべきだと訴えてきた。関係各国は抑制を保ち、問題の政治的解決プロセスを推進していくべきだ」と語った。

 中国政府は8月に行われた米韓合同軍事演習にも反対の立場を示しており、緊張を高めるような行動をとらないよう米朝双方に自制を求めた形だ。(ソウル=鈴木拓也、ワシントン=園田耕司、北京=高田正幸)