「現代の国語」に「羅生門」はNG? 高校教科書めぐり起きた波紋

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伊藤和行 編集委員・氏岡真弓
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 来年度から高校の必履修科目となる「現代の国語」の教科書に、ある教科書会社が「羅生門」などの小説を載せ、物議をかもしている。同科目では「文学的な文章は除く」と学習指導要領の解説で示されたが、五つの小説を載せた教科書が検定で合格。ライバル社が「疑義」を呈した。文部科学省のあいまいな結論にも批判が出ている。

 高校国語ではこれまで、主に1年生で学ぶ必履修科目の「国語総合」(4単位)で、小説を含めた現代文の分野と、古典の分野を教えてきた。だが、来年度からの新学習指導要領に伴う科目再編で、必履修科目は「現代の国語」(2単位)と「言語文化」(同)に分けられる。

文学的文章除くはずが…1点は検定合格

 「現代の国語」は読む教材に、評論文など「現代の社会生活に必要とされる論理的な文章及び実用的な文章」を載せることとしている。指導要領の解説では「小説、物語、詩、短歌、俳句などの文学的な文章を除いた文章」と説明する。一方、「言語文化」では「古典及び近代以降の文章」とされ、小説や随筆、漢文・古文などを扱うこととされた。

 ところが、今年3月にあった教科書検定で第一学習社(本社・広島市)が申請し合格した「現代の国語」の教科書4点のうち1点に、五つの小説(芥川龍之介の「羅生門」、原田マハの「砂に埋もれたル・コルビュジエ」、夏目漱石の「夢十夜」、村上春樹の「鏡」、志賀直哉の「城の崎にて」)が載った。文部科学省によると、他の3点や、検定を通った別の教科書会社7社の計13点に小説は掲載されていない。

 これに対し、高校で使う教科書を決める一部の教育委員会から文科省に「小説が載っているが採択してもいいのか」などと問い合わせがあった。8月13日には、教科書会社約40社でつくる一般社団法人教科書協会が文科省に「指導要領の規定との関係で、発行者間で疑義が生じている。見解を明らかに」と求めた。

■「一切禁じられているわけで…

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    おおたとしまさ
    (教育ジャーナリスト)
    2021年9月12日19時7分 投稿
    【視点】

    教科書会社の公正な競争という意味での問題と、「現代の国語」という科目の教科書に小説が載っていていいのかという問題とは切り分けて議論しなければいけない。 「現代の国語」の教科書から小説を排除することにはもともと批判も多く、多くの教科書会社も

    …続きを読む