「考え」ない菅首相、その罪深さと正しさ 失敗学の畑村洋太郎さん

有料記事アピタル編集長インタビュー

聞き手=朝日新聞アピタル編集長・岡崎明子
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 菅義偉首相が退陣する。新型コロナウイルスをめぐっては、いくつもの「波」が繰り返され、「医療崩壊」も招いた。失敗学を提唱する東京大学名誉教授の畑村洋太郎さん(80)は、人は失敗するが、そこから何を学ぶかが大切だという。この1年間の政権運営から、政治家たちは、そして私たちは何を学ぶことができるのか。

 1941年生まれ。畑村創造工学研究所代表。2002年にNPO法人失敗学会を設立。東京電力福島第一原発事故の政府の事故調査・検証委員会の委員長、消費者庁の消費者安全調査委員会委員長なども務めた。

 菅さんは、総理在任中、本当に自分で物事をしっかり「考え」ていたのかと疑問に思う。「Go To トラベル」とか、「五輪開催」とか、感染症の性質を考えたら普通はしないような政策を続けたからね。

 1年前に菅さんが総裁に選ばれたときは、ちゃんとものを考えている人だと思っていた。記者会見なんかの言葉を聞いている限りは「本当にそうだな」と思った。でも、だんだん、その言葉を信じられなくなっていった。

 そういう人を首相に選んでしまった日本の政治制度にも問題があるけど、日本のコロナ対策には、「科学性」がまったく感じられないことが問題だと思う。

 科学性というのは、起こっている現象を自分の目で見て、本当にそれを支配している要因は何なのか、これから先、どういう風に進展していくのかということを、自分で考える、ということなんだ。

「失敗学」の3原則

 「失敗学」ですごく大事にしていることがあってね。

 現地に行く、現物に触る、現人(人間)と議論する。「3現」と僕は言っているんだけど、伝聞情報に依存するのではなく、直接自分で感じたりいじったりしないと、ちゃんと自分の考えをつくることができないよ、ということ。そうでないと、すごく大きな失敗をしてしまう。

 リーダーの立場にある人は…

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