津波被害の防波堤で波力発電開発中 目指すはエネルギーの地産地消

東野真和
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 波の力で発電し、エネルギーを地産地消するモデルを作ろうと、岩手県釜石市で技術開発が始まっている。東日本大震災の津波で壊れ、再建された釜石湾の防波堤が実験の舞台だ。実用化できれば、全国の漁港や離島でも活用できると関係者は夢を膨らませる。

 事業主体は、市内の海洋土木会社や電気工事会社など4社が出資する株式会社「マリンエナジー」(泉修一社長)。

 構想では、釜石湾の湾口防波堤の上に、縦10メートル、横15メートルほどの施設を設置し、波の上下や斜めの揺れなどでダクトを通った空気の動きを利用してタービン発電機を回す。AI(人工知能)を使って波の強さを予測、制御しながら効率よく発電機を回転させる。

 年間発電量の目標は、一般家庭83世帯分の使用量にあたる33万3千キロワット時。小規模だが、蓄電して、漁港施設や定置網の監視など漁業や水産業に役立つ機器に「地産地消」する。災害時は非常用電源にもなる。

 環境省二酸化炭素(CO2)削減に貢献する委託事業に採択された。今年度から2022年度まで約4億円をかけ、まず1台を設置して技術開発と実証実験をする。その後は5台に増やす構想だ。

 釜石市は15年に国の海洋再生可能エネルギー実証フィールドに選ばれ、波力発電の海洋試験を続けてきた。18年度までは海に浮かせた装置で研究していたが、費用や安全性などで課題が多く、実用化できなかった。

 今回のプロジェクトには、東京大学先端科学技術研究センターと一般社団法人「ブローホール波力発電機構」が参加。両者は福井県越前町で、岩盤を掘削した「潮吹き穴」を使う波力発電の実証実験をしており、湾口防波堤の上に装置を置く方法を試すことにした。

 釜石の4社が協力して設備の設計や安全性を確認しながら、来年6月には発電装置を設置し、9カ月間運転させる予定。25年までに低コスト化や改良を進めて量産化をはかり、30年には防波堤を持つ他の自治体や漁港への普及をめざす。

 まとめ役をする釜石・大槌地域産業育成センターの小笠原順一・海洋エネルギー産業化コーディネーターは「津波被害をもたらした波を使って、今度は地域おこしをしたい。小規模だが、実用化できれば海外の離島でも活用できる」と期待している。東野真和

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