紀伊半島大水害10年 追悼と防災の誓い新た 五條

福田純也 浅田朋範
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 奈良県内で24人の死者・行方不明者が出た2011年9月の紀伊半島大水害から10年を迎えた。8人が死亡し、3人が行方不明になった五條市大塔町宇井では4日にあった市主催の追悼式に遺族ら約80人が参列した。犠牲者を悼み、防災への誓いを新たにした。

 参列した遺族は6組約20人。山が岩盤ごと崩れる深層崩壊の爪痕が熊野川対岸に迫る慰霊碑の前で、トラック運転手中村彰作さん(56)=五條市田園4丁目=が、被災者家族代表の言葉を述べた。

 商店を営んでいた母シズコさん(当時72)が死亡し、父勝信さん(同73)は行方不明のまま。「災害前の父や母の姿、ほほえみや声をつい最近のことのように思い返すことがあります。私たちはこの10年で年を重ねましたが、両親や被災した地域の人たちがいまでも生きていればどんなふうになっているのだろうか、年をとることのない思い出のなかの笑顔に語りかけることもあります」と肉親を失った心情を切々と語った。

 その上で被災後の地域が復興してきたことに謝意を表し、「前向きに、未来に向けて歩んでいくので力添えをお願いしたい」と締めくくった。

 橿原市の川上令子さん(59)は母の梅本ヤス子さん(当時78)を亡くした。梅本さんは宇井地区で旅館「さらや」を営んでおり、建設作業員や川釣り客などが宿泊に訪れていた。「母の思い出というとやっぱり笑顔。行方不明の人も、近所の人でちっちゃいころから知っている人。思い出すとぐっときます」。今も土砂災害のニュースを見ると人ごととは思えない。「ここの土地は大丈夫だと過信せず、命のことを思って逃げた方がいいです」と語った。

 式典で太田好紀市長は「災害の記憶と教訓を風化させずに次世代に継承し、災害に強いまちづくりに邁進(まいしん)する」と述べた。荒井正吾知事は「県として紀伊半島全体の防災力の向上を図っていく」と語った。(福田純也、浅田朋範)

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