米沢市上杉博物館で特別展「狩野派 永徳とその周辺」

石井力
[PR]

 山形県米沢市上杉博物館で開館20周年を記念した特別展「狩野派 永徳とその周辺」が開かれている。狩野派の作品で、同館を代表する収蔵品の国宝「上杉本洛中洛外図屛風(うえすぎぼんらくちゅうらくがいずびょうぶ)」や、戦国時代から安土桃山時代の狩野派の代表的作品を展示し、狩野派の展開、時代の動向や価値観などを紹介したいという。

 阿部哲人学芸員によると、16世紀は日本の絵画史上、「大きな転換点」にあたる。鎌倉時代以降、宋や元などの中国絵画をベースに描いた「漢画」があり、狩野派も漢画を基盤とした画派だった。山や河、仙人などを描き、老荘思想の影響も受けた「理想郷」を水墨画で中国風に描くのが中心だった。

 一方、平安時代以来、日本の風景や風俗を描く「やまと絵」があった。16世紀には漢画とやまと絵の融合が急速に進み、その中で成立したのが、「上杉本洛中洛外図屛風」だという。

 屛風は桃山時代随一の絵師狩野永徳の作品。織田信長から上杉謙信に贈られ、米沢藩を治めた上杉家に伝来した。制作から約450年を経たが、彩色も鮮やかに京都市中と郊外の光景、人々の生き生きとした姿を描く。

 特別展は前期(9月5日まで)と後期(9月11日~10月10日)の2部制。前期は狩野派の祖、正信が描いた人物図や永徳の画業などを12点を展示、正信からの画題などがどう展開していったかを紹介する。後期は上杉本洛中洛外図屛風など11点を展示し、人々の営みをメインテーマとして描く「風俗画」と言われる作品を主に紹介する。

 阿部学芸員は「狩野派の作品を網羅的に集めたとは言えないが、この時代の優品中の優品を展示できた」と話している。入館料は一般800円など。問い合わせは同館(0238・26・8001)へ。(石井力)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら