「防災道の駅」で変わるもの 災害時の広域拠点機能向上
【山形】車やバイクで走っていて、一息つきたいときに立ち寄れる「道の駅」。全国1193カ所(6月11日現在)にあり、観光目的で訪れる人も増えている。国土交通省は6月、その中から、36道県の39カ所を「防災道の駅」に選定した。何が変わるのか。
東北地方からは、しちのへ(青森県七戸町)▽遠野風の丘(岩手県遠野市)▽協和(秋田県大仙市)▽いいで(山形県飯豊町)▽猪苗代(福島県猪苗代町)の道の駅5カ所が選ばれた。国交省は、各都道府県から計100カ所程度の選定を予定している。
災害時の自衛隊や警察の救援活動、緊急物資の輸送、復旧・復興活動などで広域拠点としての機能を高めるねらいがある。
都道府県が地域防災計画で広域的な防災拠点に位置づけていることや、建物が耐震化されていたり、2500平方メートル以上の駐車場を備えたりしていることが要件。現時点で整っていなければ「3年程度で必要な機能、施設、体制を整えるための具体的な計画」があればいい。設備の充実、設置者である市町村・道路管理者の役割を定めた業務継続計画(BCP)策定、防災訓練などを支援する。
「宮城と新潟を結ぶ国道113号のほぼ中間にある。災害が太平洋側、日本海側どちらで起きても救助活動などの拠点になる」
道の駅「いいで」駅長の安達純一さん(70)は防災機能を重視してきた。防災道の駅に選ばれたが、「取り組みが大きく変わることはない」。
東日本大震災では、内陸にある道の駅「遠野風の丘」が自衛隊・消防車両やボランティアの後方支援拠点になった。「いいで」にも震災当日、電気関係の高所作業車などが集結。福島第一原発で爆発が起きると消防車両などが埋め尽くし、作業内容やルートを確認して出発していった。職員は徹夜で隊員らの受け入れや道案内にあたった。
地震のほか、大雪で国道が通行止めになった際、毛布や暖房器具をレストランに運び込み、食事を用意して大勢の人を受け入れたこともある。「災害はあす起きてもおかしくない。行政の対応は遅い」。そう感じ、防災設備の強化を訴えてきた。
移動式発電機やソーラーパネル48枚、自家発電庫を備え、携帯電話は10台以上を充電できるようにした。男女6基ずつのマンホールトイレも新設した。防災訓練の手引もつくった。緊急車両やドクターヘリの駐車・離着陸場所の確保、自家発電への切り替え、救護……。分刻みで想定し、訓練を重ねている。
「道の駅の施設は一律ではなく、大小様々。各施設ができる範囲で、防災の役割を果たせるようにしていく必要がある」
1993年に登録制度が始まった道の駅。国交省によると、全国約500カ所が一時避難所などとして地域の防災拠点になっている。しかし、BCPをつくったのは15カ所(昨年7月現在)にとどまる。
道路局の担当者は「BCPの策定は遅れており、ノウハウを伝えたい。防災道の駅だけでなく、すべての道の駅が地域に応じた防災機能を持つことができるようにしていきたい」と話す。(坂田達郎)
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