一家感染、母は点滴しながら授乳 在宅医が見た自宅療養

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池上桃子
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 「100件の病院に当たったけど断られた。在宅で診てほしい」。新型コロナウイルスの感染が拡大する東京都内で、搬送先を見つけられない救急隊から、医師にそんなSOSが届くという。都内で2万6千人いる自宅療養者にとって、セーフティーネットとなるのは在宅医療を担う医師だ。8月から自宅療養者の往診を始めた医療法人社団「悠翔会」(港区)の佐々木淳理事長に現状を聞いた。

医療法人社団「悠翔会」の佐々木淳・理事長(在宅医)

1973年生まれ。筑波大医学専門学群卒。三井記念病院などを経て、2006年に東京都千代田区に在宅医療専門クリニックを立ち上げ、08年に悠翔会を設立した。現在、首都圏と沖縄県に18の拠点を持ち、24時間対応で在宅医療にあたる患者は、都内だけで約6400人いる。8月に都医師会と提携を結び、都内の新型コロナウイルス自宅療養者の往診を開始。千葉県、神奈川県川崎市でも自宅療養者への往診を行う。

 ――都内では、8月に入って8人の方が自宅療養中に亡くなっています。コロナ患者が過ごす自宅では、どんなことが起きているのでしょうか

 「頭痛や倦怠(けんたい)感の症状があった40代の女性は、私たちが往診に訪れたとき、すでに5日間食事できずに極度の脱水症状に陥っていました。赤ちゃんがいるので点滴をしながら授乳をしていました。マスクは二重、窓を開けっ放しの状態でです。夫も8歳の息子も陽性でした」

 「47歳の男性は、血中酸素飽和度が89%まで悪化していました。本来ならば入院できる基準を大きく超える数値なのに、自宅療養を強いられていました。奥さんは無症状でしたが、7歳の子どもにも熱とせきの症状があった。自宅療養者の家に行くと、一家全員が感染というケースは多いです」

 ――まさに都内の感染状況は「災害」と言える状態に陥っているのでしょうか

 「私たちは、災害時の医療にあたっているつもりでいます。例えるなら、がれきの下に1万人の被災者が助けを待っている。救出しなければいけないが、1人の命も落とさないというのは難しい」

 「コロナで難しいのは、がれきに埋もれた人の姿が見えにくいことです。銀座も渋谷も平和に見えます。でも、一歩奥に入ってマンションのドアを開けると、両親が酸素を吸っていて子どもも高熱を出している、という家庭がいっぱいあるんですよ。こういう状況を、コロナに関心がない人たちにも知ってもらう必要があると思います」

 ――どのような体制で診療に…

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