急上昇する陽性率、なぜ?東京22%、川崎は異様な高さ

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天野彩 後藤一也 阿部彰芳
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 新型コロナウイルスの検査を受けた人のうち、結果が陽性だった人の割合を示す「陽性率」が各地で上昇している。東京都では22%に達し、検査能力の乏しかった昨春を除き、過去最高を更新中だ。陽性率の上昇は一般に、増える感染者数に対し、検査が追いついていないことが原因とされる。だが、都内などではまだ検査に余力があるという。では、この陽性率の上昇は何が原因なのか。

 政府の分科会は陽性率について、「10%以上」を感染状況が最も深刻なステージ4、「5%以上」をステージ3としている。

 11日時点の内閣官房の集計によると、直近1週間の陽性率は東京で22・5%。1カ月前の6・6%から急増した。神奈川県では37・0%、全国平均も15・9%と高水準になっている。

 東京ではいま、感染者数が1日5千人を超える日も出るなど、これまでにないレベルで増えている。11日の都のモニタリング会議は感染者の急増で「検査体制が追い付いていない可能性があり、PCR検査体制の強化が必要」と指摘した。

 しかし、検査能力をみると、決して余力がないわけではない。9日時点の検査人数は、直近7日間平均で約1万2千。「第3波」のピーク時と同水準だ。

都の担当者「検査を絞っているということはない」

 都の計画では、都内約3800の医療機関で1日最大4万件以上検査できる。これとは別に、都内の新型コロナの検査機関の一つ、都健康安全研究センターで1日あたり最大約1千件を受けられるが、9日の実績は218件だ。

 都の感染症対策部の担当者は「検査を絞っているということはない。検査を担う医療機関を受診した患者がこの数だったということだ」と説明する。

 検査を担う臨床衛生検査技師が所属する日本臨床衛生検査技師会の横地常広副会長も「いまは国内の検査処理能力には問題ない。医者が必要と判断すれば検査できるようになっているはずだ」と指摘する。

 以前は、検査に必要なプラスチック資材やゴム手袋といった消耗品が全国的に不足した時期もあった。だが、今はそうした資材も十分にあるという。

すでに行政検査に匹敵する規模に

 ではなぜ、検査数が伸びないのか。そこには「からくり」がある。

 日々公表されている検査件数は、症状がある人や感染者と濃厚接触した人が公費負担で受けられる「行政検査」を対象としたものだ。一方で、症状がなく、感染の可能性が低い人が「陰性証明」のために自費で受ける検査は基本的に含まれていない。自費検査で医師の診断により陽性となった場合、医師が感染症法に基づき保健所に届け出ることになっている。だが、検査件数については届け出が義務化されていない。

 この自費検査の件数が増え、さらに陽性と判定される人が増えているという。

 工務店などを手がける「木下グループ」(東京)は、全国3空港を含む14店舗などで無症状の人を対象に自費検査を提供する。ウェブによる完全予約制で、7月の4連休前以来、1日あたり約1万5千件の検査の予約は連日埋まっているという。

 同社によると、陽性率は7月上旬まで1・3%程度だったが、7月末には3%程度に跳ね上がった。担当者は「市中に感染が広がっていると言わざるをえない」と話す。

 厚生労働省は先月、一部の民間検査会社から提供された自費検査の件数を公表し始めた。それによると、8月1~7日で計約46万件。この間の行政検査は約58万件。検査件数を提供していない機関があることを考えれば、すでに行政検査に匹敵する規模だ。

 自費検査の件数がもし全て届け出られていて、陽性率の計算に加えられれば、陽性率は大幅に下がることになりそうだ。

陽性率が異様な高さの川崎市

 川崎市では8日時点の陽性率…

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