「女子も強いと証明したい」五輪クライミング王者の信念

遠田寛生

 至福の瞬間だった。表彰台の頂点に立ち、両隣には大好きな2人がいる。

 東京オリンピック(五輪)で今大会から採用されたスポーツクライミング。女子複合で金メダルに輝いたスロベニアのヤンヤ・ガルンブレト(22)だ。

 2018、19年の世界選手権王者で、ワールドカップ(W杯)は17年から26大会で優勝。圧倒的な強さを誇り、国中から金メダルを期待されていた。

 優勝後は喜びと安堵(あんど)が入り交じっていた。「世界中から重圧がかけられているような気がしていた。本当にうれしいし、夢がかなった」

 五輪の舞台が日本になったことに、不思議な縁を感じていた。

 新型コロナウイルスの感染が広まる前は、日本が好きでトレーニングのためによく来日してもいた。片言ながら日本語も勉強している。

日本選手と高め合ってきた

 銀メダルだった日本代表の野中生萌(24)=XFLAG=と、銅メダルの野口啓代(32)=TEAMau=との親交も深いという。

 同世代の野中はライバルであると同時に「仲間」という思いが強い。「とても尊敬しているし、仲良くさせてもらっている」。日本のエースとして活躍してきた野口は、幼い頃の憧れの存在だった。「私のロールモデル。これだけ長い間、高いレベルを維持して活躍している。クレージーだよね」

 自身、昔からとにかく登る子だった。木や壁、クローゼット、ドア……。手当たり次第、挑んできた。「だって、頂上に立ったときの気分がいいから」

 競技との出あいは6、7歳の頃。地元で行われていたイベントだった。誰もクリアできなかった約5メートルの壁を、簡単に制した。

 当時はテニスやダンスもやっていた。課外活動をさせたかった両親に一つ選ぶよう言われて、クライミングを選んだ。

 10代後半で世界のトップレベルに。高校を卒業した後も大学への進学をとりやめ、競技に専念する道を選んだ。

 上達方法を尋ねると、「楽しむこと」と「オープンな性格」。コーチとは普段からよく話をするが「アドバイスはもちろんだけど、厳しい指摘も甘んじて受け入れている」。

国内で人気上昇中

 スポーツを楽しむのは国の文化かもしれない。東欧にあるスロベニアは、人口約209万人(外務省調べ、19年)。国の面積は、四国とほぼ同じとなる2万273平方キロメートルの小国だが、スポーツはとても盛んだ。

 スキーのジャンプやアイスホッケーなどの冬季競技や、サッカーも人気。バスケットボールでは米プロNBAマーベリックスで活躍し、東京五輪に出場したルカ・ドンチッチもいる。ガルンブレトの活躍により、国内でスポーツクライミングへの注目度は急上昇している。

 東京五輪では活躍を通じて、競技の魅力を伝えることも目指していた。

 「女子だって男子と同じぐらい強いし、すごい。それを証明したい。若い世代に自分を信じて取り組めば、何でもできることを示したい。『あの子』みたいになりたいって思ってもらえたらうれしい」

 長年の思いは成就した。(遠田寛生)