「ウクレレヒーローがいたっていい」 革新続ける28歳

定塚遼

ウクレレはハワイ音楽に閉じ込められている?

 ウクレレといえばハワイアン音楽だ。28歳のウクレレ奏者・名渡山(なとやま)遼は、そんな強固に結びついた固定観念を打破し、ウクレレの楽器としての可能性を広げようとしている。

 ロックやラテン、ファンク、ジャズ、フランス民謡……。7月28日にリリースした新アルバム「Sense」では、異なる表情を見せる10曲が並んだ。

 打楽器のように弦をたたきつけて音をだすベースの奏法・スラップを初めてウクレレに取り入れる試みなど、いずれの楽曲も、従来のウクレレのイメージとは一線を画した革新の風が吹く。

「ウクレレがかわいそう」 革新が生んだ反発

 ときにギターのような鋭いカッティングを見せるが、放たれる音はギターよりも早く減衰し、吸い込まれるように消えて残響を残さない。

 「桜が散るようなはかなさ」。ウクレレの音の魅力について、名渡山はこう形容する。11歳のときに家族旅行でハワイに行き、父が買ったウクレレの音色に魅了され、一気にのめり込んだ。

 中学に入るとギターをやっている人はクラスでもてはやされたが、「ウクレレをやってる」というと、周囲にポカーンとされた。

 「『ウクレレ? おじさんっぽい楽器。なんでそんなのやってんの?』みたいな扱いをされて、すごくショックで悔しかった。どうしてこんなにすごい楽器なのに、そんなことを言われなければいけないのか」

 ウクレレの認識を変えたい、という考えはそうしたある種のコンプレックスが原動力となった。

 名渡山が作ってきたウクレレを用いた革新的な音楽は、ときに従来のウクレレファンからの反発も生んだ。「ウクレレがかわいそう」。そんな風に言われたこともあった。

「ウクレレヒーローがいたっていい」「世界を変えたい」

 「でも、自分は、ウクレレは楽器としてのポテンシャルに見合う活躍ができていないと思う。だから『この音楽には合わない』という先入観を持ちたくない」と話す。活動は徐々に浸透し、批判の声も少なくなってきた。

 「ハワイのグラミー賞」と言われる「ナ・ホク・ハノハノ・アワード」の最優秀インターナショナル・アルバム部門を受賞するなど、本場・ハワイでもその音楽は評価された。欧州やアジア諸国など、海外での公演を重ね、革新的なウクレレサウンドを広く世界に届けている。

 「ギターヒーローがいるように、ウクレレヒーローがいたっていい。自分は死ぬまでに、誰もが口ずさめるくらい浸透した、格好いいウクレレの楽曲を最低10曲は作りたい。そして、ウクレレをかっこいいと思う人がたくさんいる世界に変えていきたい」(定塚遼)