米競泳金メダリスト、介助者帯同認められず東京パラ辞退

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ニューヨーク=藤原学思
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 リオデジャネイロ・パラリンピックの競泳で三つの金メダルを獲得した盲ろうの水泳選手、ベッカ・メイヤーズさん(26)が、東京大会の辞退を決めた。「パラリンピックはすごく特別な場所。私らしくいられる機会を与えてくれる」。ではなぜ、出場しないのか。21日、朝日新聞のオンライン取材に思いを語った。

 メイヤーズさんは米東部メリーランド州出身。生まれつき耳が聞こえず、徐々に視力も衰える先天的な難病「アッシャー症候群」を患っている。人工内耳と呼ばれる電子機器を使い、介助犬のバーディーとともに日常生活を送る。

 水泳は6歳で始めた。17歳でパラリンピックに初出場。2種目で銀、銅と二つのメダルを手にした。2016年のリオ大会では金メダル3個、銀メダル1個を獲得。2019年の世界選手権でも、400メートル自由形で優勝した。

 「ここ数年、私は盲ろう者のベッカではなく、水泳選手のベッカとして知られてきました。水泳は私に、アイデンティティーを与えてくれました。日々、起きる目的を与えてくれたんです。米国代表として戦うことが大好きなんです」

 メイヤーズさんは17年の国際大会から、米五輪・パラリンピック委員会(USOPC)の了承を得て、介助者として母親のマリアさんを帯同してきた。前年のリオ大会で十分なサポートを得られず、選手村を歩くのも、食事をとるのも満足にできず、精神的に打ちのめされてしまったためだ。

 だが、5月初旬、USOPCから「東京大会への介助者の帯同は認められない」との知らせを受けた。

 日本で新型コロナウイルスの感染が広がる中、各国の代表団は来日する人数を絞っている。USOPCも例外ではなく、メイヤーズさんによると、東京に行く水泳選手34人に対し、介助者は1人だという。

 「私は東京に行ったことがない。まったく新しい環境で、マスクの着用が義務づけられている中、頼れる介助者の存在なしに、私が1人で移動することはほぼ不可能です」

 5年間、東京大会のために準備をしてきた。ただ、ストレスが高まり、食欲は減退し、眠りも浅くなった。USOPCと交渉を重ねたが、結局認められず、18日になって正式に辞退を伝えた。

 「胸が痛いです。言葉にはで…

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