子どもの居場所、コロナ下こそ 夢パークを「守りたい」

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上野創
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 井戸水が流れるスロープを、ずぶぬれの子どもたちが滑り降りて派手に水しぶきを上げる。ぬかるみで泥にまみれる子、小屋の屋根からマットに飛び降りる子、うちわを手にたき火の炎に夢中な子……。

 太陽が照りつけ、気温が30度を超えた7月10日の土曜日。屋外のプレーパークを中心に多種多様な遊びを楽しめる「川崎市子ども夢パーク」には、子どもと親が次々と訪れ、歓声が響いていた。

 「大勢の子どもが来て、思いきり遊んでくれるのはうれしい。ただ不安は常に感じています」。夢パーク所長で、運営する認定NPO法人「フリースペースたまりば」事務局長の友兼大輔さん(41)は、新型コロナウイルス感染防止策の話をしながらそう語った。

「行き場ない子いる」 閉めない決断

 夢パークは20年前の2001年に施行された「川崎市子どもの権利条例」に基づき、条文にもある「子どもの居場所」として市が開設した。2階建ての建物の一画には学校になじめない子が通う「フリースペースえん」があり、ここも「たまりば」が指定管理者として運営する。18年にわたって「子どもが安心して遊び、休める場」を提供してきたが、昨春の感染拡大時は一時閉鎖の可能性もあった。

 一斉休校に続き、市内外で多くの公的な行事が中止に。図書館なども次々と閉鎖され、公園の遊具は使えなくなった。緊急事態宣言も出たが、夢パークと「えん」は開所時間を短くし、開け続けた。

 「行き場がない子のために今こそ必要ですと訴え、市側と協議して、閉めないと早々に決まったんです」と、「たまりば」理事長の西野博之さん(61)は話す。

 初の緊急事態宣言が出ていた昨年5月。記者は夢パークで、ホースの水をかけあってはしゃぐ小学4年の姉と幼稚園年長の弟に会った。自転車で15分かけて来たという母親は「家の近くにも公園はあるけど、こんなときに外遊びか、という周りの視線が気になる。夫はオンライン会議でピリピリしていて、子どもたちもずっと家でつらそうだったから、ここへ連れてきて良かった」と話した。

 当時、西野さんが心配したのは家庭で高まるこうした緊張感だった。子どもがずっと家から出ず、夫も在宅になり、行き詰まった母親から「子どもに手をあげてしまいそう」という電話も受けた。

 発達がゆっくりという別の子…

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    おおたとしまさ
    (教育ジャーナリスト)
    2021年7月20日13時59分 投稿
    【視点】

    数カ月前に取材した東京都の西多摩地区のプレイパークの運営者も、散々悩んだ挙げ句にやはり子どもたちの遊び場を存続する決断をしたと話してくれました。子どもたちが遊ぶ「三間(さんま、時間、空間、仲間)」を奪うことは、食事を与えないことと同じくらい

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    中小路徹
    (朝日新聞編集委員=スポーツと社会)
    2021年7月19日9時27分 投稿
    【視点】

     子どもの居場所を、という視点は、外遊びの場や、放課後児童クラブなどを運営する各NPO法人が、新型コロナ禍で特に大事にしてきています。  何らかの理由で家に帰れなかったり、学校に行きづらい子が安心していられる場としてだけでなく、「感染のリ

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