虐待の痛みを知るホクト 迷子の柴犬に差し伸べられた手

有料記事いつも、どこかで

若松真平
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 柴犬「ホクト」と出会ったのは昨年12月、寒い日の夜だった。

 日付が変わるころ、仕事を終えた儀同しょうこさん(42)は、東京都東村山市で車を走らせていた。

 すると突然、目の前を何かが横切った。

 急ブレーキをかけながら、しっぽのようなものが一瞬見えた。

 車を止めて外に出ると、犬がいた。ボロボロの見た目でやせ細っていた。

 飼い主が探しているかもしれない。

 そう思って警察に連絡し、動物病院へ連れて行くことにした。

 警察が飼い主を見つけてくれたが、動物病院で治療中であることを伝えると一方的に電話を切られた。

 それから連絡がとれなくなり、3カ月後に儀同さんが引き取ることが決まった。

 名前は聞けなかったため、ホクトと名付けた。

 前の飼い主と暮らしたいのか、自分と暮らしたいのか、気持ちはわからない。

 でも、ホクト自身の願いがかなうといいな、という思いから北斗七星にちなんで命名した。

心を開いてくれた瞬間

 ホクトは人間に近づこうとしなかった。

 長い柄のほうきを手にすると、急におびえた。

 物を落とした時のガチャンという音を聞いただけで、ガタガタと震え出した。

 なでようとするといつもビクビクして、どう甘えていいか分からないように見えた。

 もしかしたら、虐待されていたのかもしれない。

 そう思ったから、近づく時や触る時は必ず、先に声をかけるようにした。

 「怒らないからね」「これから首輪をつけて散歩に行くよ」といった具合で。

 1カ月半ほど経ったころ、初めてホクトの方から行動してくれたことがあった。

 散歩の途中、脚を拭いてあげたタオルをしまおうと背を向けていた時のこと。

 前脚でチョイチョイと、背中をたたいてきた。

 やっと信頼してもらえたんだ。そう思えた忘れられない瞬間だ。

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