「代表監督がお辞儀なんて」 気配りの森保監督の原体験

勝見壮史

 サッカーの24歳以下(U24)日本代表の練習試合が終わり、対戦相手となった学生たちがベンチ前に集まったときだった。代表の森保一監督が、駆け寄っていき、お辞儀をした。「今日はありがとうございました。皆さんも、頑張って下さい」

 東京オリンピック(五輪)に出場するチームは5~10日、静岡県御前崎市で事前合宿を行った。8日に行われた静岡産大との一戦は、急きょお願いして組まれた。森保監督は、そのお礼を伝えたのだった。

 静産大の加藤知弘ヘッドコーチは言う。「代表監督が、あいさつに来てくれた。しかも学生たちにお礼をしてくれて。もう、みんな大ファンですよ」

 練習場のグラウンドキーパーたちもそうだった。

 芝を管理する施設の担当者によると、合宿初日、森保監督から「こんな素晴らしい環境を用意していただき、ありがとうございます」と、いきなり感謝の言葉をかけられた。

 以来、森保監督は、練習のたびに、水をまくスタッフたちに歩み寄り、あいさつを交わしてくれたという。雨が降った日は笑顔でこう言った。「今日はお仕事されなくて大丈夫ですから、マッサージでも行って休んで下さい」。アマチュアからプロまで、合宿や練習で多くのチームが訪れるが、そんな風に話しかけてくる監督は初めてだという。「あんな気配りができるなんて、すごい。みんな信頼してついて行きますよね」と担当者は、興奮気味に振り返ってくれた。

 用具を管理するスタッフら裏方に歩み寄ってねぎらったり、練習後に選手の言葉に耳を傾けたり。大きなプレッシャーがかかる地元開催の五輪が迫っており、ピリピリしてもおかしくない。そんな環境でも、人に寄り添い、尊重する普段と変わらない森保監督の姿は、頼もしく感じる。

 12日には、移動した大阪で、U24ホンジュラス代表との国際親善試合に臨む。有観客で行われるが、五輪の1次リーグ3試合は無観客での開催が決まった。森保監督は残念だとした上で、こう語った。「我々の活動の環境作りをして下さっている方々が、本当にたくさんいることに変わりはない」

 周りの支えがあってこそ、好きなサッカーを続けられる。森保監督にはそんな原体験がある。進学した中学校にサッカー部はなかったが、保護者たちの働きかけで、部ができた。練習場を探してきてくれたのも自身の父だった。

 「コロナ禍や自然災害などで、苦しんでおられる方がいっぱいいる。その中で、自分たちは好きなことができている」。だからこそ、応援してくれる全ての人に、試合でのひたむきなプレーや結果で、恩返しをしよう。選手にはいつものようにそう伝えている。(勝見壮史)