ACLの食事事情とは?川崎は専属シェフ、セレッソは…

辻隆徳、高岡佐也子

 サッカーのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の1次リーグが6月から7月にかけてウズベキスタンとタイで集中開催され、Jリーグからも4クラブが参戦。新型コロナウイルスの影響で身動きが取りづらい中、選手たちにとっての楽しみのひとつが「食事」だ。ただ、開催地やクラブによって、どうやら事情は違ったようで……。

 「サバの塩焼きが朝食に出るんですよ。おいしかったな……」

 そうしみじみと語ったのは、5連勝で決勝トーナメント進出を決めた川崎フロンターレの鬼木達監督だ。チームの胃袋を支えるために、日本から開催地ウズベキスタンに同行したシェフ、西芳照さん(59)の存在が大きかった。

 新型コロナの感染者数が少ないウズベキスタンでは、滞在先のホテルの厨房(ちゅうぼう)で調理をすることが許された。選手たちはホテルの同じ場所で、ある程度の距離をとって食事を取った。現地で出されるメニューに加え、西さんがつくった日本食の料理を口に運んだ。

 西さんは2004年からサッカー日本代表の専属シェフを務め、多くの国際大会で腕を振るってきたベテラン。川崎のACL同行は3回目という。ホテルのスタッフと「脂身の多い肉は避けたほうがいい」などと会話を交わし、現地でのやりとりも慣れたものだ。

 今回最も気をつけたのが食中毒だ。現地の気温は35度を超えることも多く、食材の管理には気をつかった。火を使う厨房は50度近くになるときもあるが、念入りに調理した。

 これまでの滞在では、牛タンの塩焼き、チャーハン、カレーなどをつくった。なかでも好評だったのが焼き肉。コチュジャンやニンニクを使ったタレが選手たちの食欲をそそった。

 鬼木監督は、サバの塩焼きのほか、パスタや親子丼、野菜炒めといったメニューを挙げ、「食事にはまったく不自由しなかった」と感謝。西さんは「少しでもチームの助けになっていればうれしい」と話す。

 一方、1次リーグを4勝2分けで突破したセレッソ大阪は、過酷な食事環境の中で戦っていた。

 開催地のタイは、昨年3月から続く「非常事態宣言」のさなかにあった。大会は、外部との接触を遮断する「バブル」の中で進んだ。日本から調理スタッフを連れて行ってもホテルの厨房には入れないため、事前に打ち合わせをして現地に向かった。みそ汁に似たスープを用意してくれるなど、チームの要望に応えようと努めてくれた。ところが、「想定外」は次々に起きた。

 肉類を極力食べない選手用のメニューが少ない、選手によってはサラダのドレッシングが辛くて食べられない――。食事はそれぞれ部屋にこもって食べる「孤食」スタイル。時間になると、各選手の部屋の前に袋に入った弁当が置かれた。ビュッフェ形式と違って、食べる量の調節も難しい。

 チームはすぐに改善に乗り出した。

 タイ入りから3日ほどして、現地のコーディネーターに事前に探してもらった日本人の料理人に「食事の監修」を依頼。ホテルのスタッフにしょうゆの使い方から説明したといい、その料理人も1週間経った頃には調理が可能に。サラダの味つけや副菜の量は、事前申告制になった。

 スポンサーの提供で現地に持ち込んだ「非常食」も大活躍した。親子丼や牛丼といったレトルト食品だ。部屋の電気ポットで温めてそのまま食べたり、弁当の一品に加えたりした。日本から持参したカステラやクラッカーも貴重な栄養源になった。

 セレッソ大阪の広報担当の石田慎也さんは「食事が改善されるにつれ、選手から『あれがおいしかった』と良い反応も出るようになった。『これで乗り切れる』と思った」と振り返った。(辻隆徳、高岡佐也子