西成の崩落、危険は全国に 専門家「対策に自治体格差」

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華野優気 新谷千布美 井上正一郎
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 大阪市西成区で6月25日、高台に立っていた棟続き住宅2棟4軒が突如崩落した。残った住宅1軒も崩落の危険性が高いとみられ、大阪市は2日、撤去に向けた作業に着手した。一歩誤れば大惨事にもなりかねなかった住宅崩落はなぜ起こったのか。

 高台に1軒だけ立っている住宅で2日、撤去に向けた作業が始まった。崩落の危険性があるため、大阪市が所有者の同意を得て実施を決めた。この日は住宅が高台下ののり面に崩落しないよう、反対の道路側からワイヤを張る作業などがあった。6日には住宅を引き倒して撤去する方針だ。

 この住宅のすぐ北側にあった棟続き住宅2棟4軒が崩落したのは6月25日午前だった。

 「家が崩れそうだ」。25日午前7時15分ごろ、住民が通りがかった大阪府警阿倍野署員に異変を訴えた。その15分後に1棟2軒がのり面の下に崩落し、午前10時半には隣接の1棟2軒も崩れ落ちた。初めに崩れた棟の1軒には住人がおり、避難を呼びかけた近隣住民の女性は「危ないところだった」と話した。

 登記などによると、崩落した住宅はいずれも1960年代後半に建てられた。現場は、大阪市中心部を南北に貫く「上町台地」の一角。住宅の西側は高さ約6メートルの急なのり面になっており、石積みの擁壁が設置されていた。まず擁壁が崩れ、その後に住宅が崩落したとみられる。

 当時、のり面の下では、老人ホームの建設工事が進んでいた。鉄筋コンクリート6階建てで、来年2月ごろに完成する予定だった。

 工事を手がける業者などによると、今春、のり面の擁壁の一部に隙間が見つかったため、5月末~6月中旬に補強工事をした。

 ただ、今回崩落した住宅直下の擁壁には当時異状は見られず、補強もしなかったという。

 建設工事がどれだけ崩落に影響したかもわかっていない。

 地盤工学が専門の河井克之・近畿大教授は崩落後に現場を視察した。

 河井さんは、現場の擁壁の固め方を問題視した。通常、石積みの擁壁は強度を高めるために石と石の間をモルタルで固めるなどするが、現場は石同士をかみ合わせて積んであるだけに見えた。「石が固められていなければ、元から危険な状態だったといえる」

 擁壁の隙間からは草が生い茂っていた点にも着目した。擁壁の裏側の地下水を抜く穴が目詰まりし、水分を含んで重くなった土が擁壁に負担をかけていたことも考えられるという。

 斜面が多い日本ではこうした…

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