中国共産党100年 夢見るのは平和発展か、赤い帝国か

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聞き手 北京=冨名腰隆 編集委員・塩倉裕
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 中国共産党が結党から100年を迎えた。内戦を勝ち抜いた毛沢東らが中華人民共和国を建国。その後の対外緊張と国内混乱を経て、社会主義の看板を掲げたまま資本主義的発展を牽引(けんいん)、世界に多大な影響を及ぼす存在となった。この先、どこへ向かおうとしているのか――。

大事なことは永遠に覇権を唱えないこと 王向明さん(中国人民大学教授)

 ――社会主義の試みはソ連や東欧で挫折しました。中国共産党はなぜ100年も続いているのですか。

 「社会主義の考え方には長い歴史があります。英国の思想家トマス・モアは1516年に発表した『ユートピア』で、社会主義的な理想社会を描きました。追求したのは『連帯と共有』。まさに古代中国の思想に通じます。孔子は『天下は公(おおやけ)のもので平等だ(大同思想)』とし、孟子は『親を敬い、子を思う気持ちをよその家庭にも広げよ』と説いた。中国はそもそも社会主義に似た文化的遺伝子を持っていたと言えます」

 「ソ連や東欧の失敗は、マルクス主義の基本原則に背を向けたことにあると思います。ソ連共産党の場合、1990年の憲法改正で国家の指導的地位が失われる一方、硬直化した経済モデルは守り続けた。社会主義の失敗ではなく、彼ら自身の失敗です」

 ――中国共産党はわずか58人からのスタートでした。どのように支持を集めたのですか。

 「近代中国には屈辱的な歴史があります。アヘン戦争や日清戦争以降、半植民地化が進み、国家独立や民族解放へ努力する時期に中国共産党が生まれました。当時の中国には血を流さずに社会を変える『改良主義』や、多党制で政治改革を進める『緩やかな社会主義』という試みもあった。だが、毛沢東が『十月革命の砲声がとどろき、マルクス・レーニン主義が我々に届いた』と語ったように、ロシア革命に啓発された中国人はこれが成功の道だという考えに至った。結党からたった28年で中華人民共和国が成立したのは、歴史の必然と言えます」

 ――中国は平等な社会へ向かっているのでしょうか。貧富の差は開く一方に見えます。

記事後半では、「中国と西洋の自由観は異なる」とする王向明さんが、中国が目指す方向について語っています。一方で、「格差への不満がいつ爆発するともしれない」とする東京財団政策研究所主席研究員の柯隆さんが、中国が抱える問題を指摘しています。

 「マルクスは私有権を否定し…

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