「新型コロナウイルス」の言葉が朝日新聞に初めて登場したのは2020年1月9日。以来世界で猛威を振るい、国内、群馬県内にも大きな影響を与えた。様々な指標をもとに、コロナ禍の県内経済を振り返る。

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 日本銀行前橋支店が原則毎月発表している景気判断で、「新型コロナウイルス」の言葉が初めて使われたのは2020年3月だった。以来、コロナ禍の影響について言及してきた。

 最新の判断は「引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している」。2月から判断を据え置いている。

 昨年9、10月には「巣ごもり需要」や、自動車関連産業の持ち直しなどを背景に、前回から判断が引き上げられたが、ここ1年は下方修正や据え置きの判断が多い。

 渡辺真吾支店長は「景況は依然厳しい状況が続いている。今後ワクチン接種が進み、県内経済の柱の一つである宿泊業などの対面型サービスが戻ることが景気回復の鍵になるのではないか」と話している。

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 感染拡大は雇用にも影を落としている。群馬労働局が毎月発表している労働市場速報では、昨年2月分(3月発表)に「コロナ」が初登場。有効求人倍率では「コロナ前」は1ケタ台もあった全国順位が、昨年夏からは20位台にまで落ち込むことが多くなった=表。

 ハローワークに登録された求人数と求職者数の比率を表す有効求人倍率は、1倍を超えたら求人超過の状態。だが、労働局がより注視しているのは、19カ月連続で減少が続いている有効求人数だ。

 感染拡大前から求人数減は続いているが、職業安定課の担当者は「米中の貿易摩擦の影響で求人数は減少していたが、コロナが追い打ちをかけた。自動車輸出など好転のきっかけがあれば求人も増えるが、ワクチン接種など根本的な感染収束がないと、厳しい状態が続くのではないか」と分析する。

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 県内企業の業績はどうなるのか。帝国データバンク群馬支店が5月に発表した企業の意識調査では、2021年度の見通しが、前年度見通しに比べ「増収増益」と「減収減益」との差が狭まる結果になった=表。

 前年度調査では減収減益が増収増益の約5倍だった。「ワクチン接種が本格化し経済活動が正常化する、という予想を持つ企業が多いのでは」と同支店は見る。ただ、「小規模企業や個人など資金繰りで苦境を強いられる事業主も多い。これらを支える仕組みは今後も必要だ」。(寺沢尚晃)

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