英国、接種が進んだのに感染が再拡大 ワクチンを過信?

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ロンドン=金成隆一 サンパウロ=岡田玄 ドバイ=伊藤喜之 奈良部健 ワシントン=合田禄
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 新型コロナウイルスのワクチン接種で先行する英国で、1日の新規感染者が約4カ月ぶりに1万人を超える水準になっている。感染力が強いインド型変異株の増加が原因とみられ、ロックダウン都市封鎖)の解除も延期した。接種率が高いのに感染者数が増加している国はほかにもあり、「ワクチンへの過信」を警告する声も出ている。

 英国では1日の感染報告がピークだった1月の6万人超から、4月下旬には2千人前後に減った。だが、5月下旬に再び増え始め、6月17日、2月22日以来の1万人を突破。イングランド公衆衛生庁(PHE)は、新規感染の99%がインド型と分析している。

 原因の一つに挙げられているのが、歴史的につながりの深いインドからの渡航禁止措置の遅れだ。インドでは4月半ばには1日あたりの新規感染者数が20万人超だったが、原則禁止にしたのは同23日。「遅れる間にインドから少なくとも2万人が入国した」(サンデー・タイムズ)などと政府に批判的な報道も目立つ。

 ウイルスが変異する中で、ワクチンの効果を見極められなかった可能性もある。2回接種が必要なアストラゼネカ製でも、1回接種で一定の発症予防効果があると判断。より多くの人が早く接種できるよう、2回目までの接種間隔を約3カ月とした。ところがPHEは5月、インド型に対しては2回接種後の発症予防率は60%だが、1回接種後は33%にとどまると発表した。

 感染予防にも一定の効果はあるとみられるが、発症予防と同じように、1回接種ではインド型に対する感染予防の効果が低いことも考えられる。

 またイングランドでは、少なくとも接種を1回受けた割合(推定値)は65~69歳の95%に対し、25~29歳は40%。3月からイングランドでロックダウンの段階的な緩和を始めてパブの屋内営業などを解禁しており、若者を中心に感染が広がっている懸念もある。

 ただ、感染による死者数は今月1日にゼロを記録するなど目立って増えてはいない。PHEは18日、インド型で入院した806人のうち527人が未接種で、185人が1回接種だったと発表。重症化を防ぐ効果は出ているようだ。

 そのため英政府は、2回の接種間隔を約2カ月に短縮。イングランドでのロックダウン解除を当初計画の今月21日から来月19日に遅らせた。ジョンソン首相は延期により、「(さらに)数百万人にワクチンを提供し、何千人もの命を救える可能性がある」と話した。

ワクチン効果に疑問? 経済考慮で対策に緩さ?

 南米のチリも人口の6割が2回目の接種を終えているが、感染者数は高止まりが続く。政府は5月下旬にロックダウンの緩和を発表したが、首都サンティアゴなどで再び規制強化に追い込まれた。

 チリでも当初、政府は中国のシノバック製で1回目の接種を大量に進める計画だった。だが、チリ保健省によると、シノバック製の発症予防効果は54%とファイザー製の約95%よりかなり低く、2回目の接種を急ぎ始めた。2回の接種を終えれば、死亡率は8割減少したという報告もある。

 また、米紙ウォールストリー…

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    沢村亙
    (朝日新聞論説主幹代理=国際政治、社会)
    2021年6月22日13時45分 投稿
    【視点】

     米国はワクチン過信というより、一時は急速に進んだワクチン接種がここにきて伸び悩んでいる。現地報道によれば5月下旬の時点で高齢層は8割以上が接種を終えた一方、18~29歳は4割にとどまった。政治的理由も含めワクチンを拒否する人に加え、「自分

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