はつらつとした30代の女性教師が、モノクロ写真の中で子どもたちに語りかけている。それに応えようと、木造の机に座った児童たちは、めいっぱい手を挙げている。
写真説明には《語れなかった戦争体験》とある。
沖縄県糸満市の「ひめゆり平和祈念資料館」。沖縄戦に動員され、222人のうち123人が亡くなった元ひめゆり学徒隊の戦争体験を伝えてきた資料館は今年、17年ぶりに展示を一新した。
「ぴんとこない」といった来館者の感想に危機感を持ち、新しい展示は戦後生まれの職員が初めて担った。カラフルなイラストを多く使うなど、身近さやわかりやすさを追求。戦後世代が特に力を注いだ新しいコーナーが、「ひめゆりの戦後」だ。
【連載】終わりなき沖縄戦
沖縄は6月23日、戦後76年の慰霊の日を迎えます。20万人余りが亡くなった地上戦で、いったい何があったのか。いまも終わっていない、といわれるのはなぜなのか。現地から報告します。
元学徒で元館長の島袋淑子さん(93)が教壇に立つ風景は、米軍統治下の1961年の撮影。《元ひめゆり学徒の多くは戦後教師となったが、教え子にも戦争体験を語ることはほとんどなかった》とも記された。
壮絶な戦争体験そのものだけでなく、戦後をどう生きてきたのか――。これまでにない常設展示の実現には、曲折があった。
資料館は89年、沖縄戦を生き延びた元学徒らが自分たちで資料を集め、展示を考え、開館した。「戦後」に焦点をあてた初の企画展は2003年。学芸員だった現館長の普天間朝佳さん(61)の提案だったが、元学徒らは必要ないと反対した。
資料館の目的は、戦争体験を…
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