妊娠伝えたらLINEは途絶えた 公園で出産した母の涙

有料記事きょうも傍聴席にいます。

山本知佳
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 20歳の誕生日を迎えて約2カ月後、妊娠がわかった。誰にも打ち明けないまま、おなかは大きくなる。それでも、女は「便秘です」と妊娠を否定し続けた。その理由は――。

 5月17日、名古屋地裁岡崎支部であった裁判員裁判の初公判。被告(21)は、肩上の長さのショートヘアに、黒のパンツスーツ姿で出廷した。

 起訴状によると、被告は2020年6月2日、県内の公園のトイレで男児を出産。そのまま放置して死なせ、公園の植え込みに遺棄したとされる保護責任者遺棄致死と死体遺棄の罪に問われた。

 罪状認否で被告は、保護責任者遺棄致死罪について「意識がなかったのでわかりません」と、か細い声で否認した。

 冒頭陳述などによると、妊娠が分かったのは19年10月末。相手は小学校時代の元同級生だった。付き合ってはいなかった。

 弁護人「妊娠したと分かった時、どう思いましたか」

 被告「どうしたらいいんだろうと」

 弁護人「相手には連絡しましたか」

 被告「病院を受診した次の日に、LINEで伝えました」

 弁護人「どういった返事がありましたか」

 被告「ごめん。俺が悪い、と」

相手は消えた 母にも、友人にも言えなかった

 自分は看護専門学校に通う学生、相手は定職に就いていなかった。2人で話し合い、中絶すると決めた。手術も予約した。

 だが、当日までに相手から「同意書」のサインをもらうことができなかった。

 弁護人「相手はどうしたんですか」

 被告「免許合宿に行っていて…

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    栗林史子
    (朝日新聞記者=ダイバーシティ、企業)
    2021年6月17日17時17分 投稿
    【視点】

    とても多くの社会の問題点(女性の問題点ではなく)が含まれた記事だと思います。同意書なしに女性が中絶できない現状、「結婚前の妊娠は順番が違う」と女性に恥を負わせる風潮、妊娠後に教育から排除されること、妊娠届を出されないと行政側が把握できないこ

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きょうも傍聴席にいます。

きょうも傍聴席にいます。

事件は世相を映します。傍聴席から「今」を見つめます。2017年9月~20年11月に配信された30本を収録した単行本「ひとりぼっちが怖かった」(幻冬舎)が刊行されました。[もっと見る]