電子図書館が1年で倍増 紙にない魅力、ただ残念なのは

有料記事東京インサイド

大坪実佳子
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 ネット上で本を借りられる「電子図書館」を導入する自治体が、コロナ禍で急増している。

 使い勝手は? 紙との違いは? 取材してみると、デジタル空間ならではの工夫がある一方、残念なところも見えてきた。

 全国に先駆けて2007年に始めた東京都千代田区立図書館の「千代田Web図書館」を体験させてもらった。ログインすると、トップページには新着資料や貸し出しランキングが表示されている。検索窓で本を探せるほか、ジャンル別に調べるコーナーもある。

 「ながねこさん」(ケンヤ・カセ作、アイフリークモバイル)という絵本をクリックして「借りて」みた。軽快な音楽とともに本文が読み上げられた。紙から電子化したのではなく、「デジタルファースト」で生まれた作品には、絵が動いたり効果音が出たりするものも多い。絵本というより、動画を楽しむ感覚に近い気がした。

 著作権の観点から、一つのコンテンツにつき利用できるアカウント数はそれぞれ決められている。だが、他の人が借りていても、「試し読み」機能がついている本であれば前書きや最初の数ページを読むことができた。順番待ちをしながら、先取りして本の内容を少し味わえるのは便利だ。

 電子図書館は、パソコンやスマートフォンなどの端末があれば、24時間365日、好きな時にどこでも借りられる。重たい本を持ち運ぶ必要もなく、期限がきたら自動で返却される。

 文字を拡大できるほか、本によっては、日本語のみならず、英語やフランス語、中国語など多言語で読み上げられる本もある。

 借りる手順は簡単だ。同館の場合、来館して利用登録し、貸出券を作る。貸出券に記載された8桁の数字がIDで、それをもとに図書館のホームページでパスワードを設定したら、同じIDとパスワードで「千代田Web図書館」にログインできる。一般図書とは違い、電子図書館を利用できるのは、区内に在住・在勤・在学の人のみだ。電子図書館のシステムを提供する会社との契約で、出版社や作家の収益に考慮し、利用する人口に応じてシステムの金額が変わる仕組みだからだ。

 図書館にとっても、メリットはある。本が雨でぬれたり、ページが破れたり、紛失したりする心配はない。蔵書スペースはいらず、職員による貸し出しや予約、催促の手間も不要だ。

新刊やベストセラーが読みたいのに

 ただ、「千代田Web図書館…

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