トラ原口は「川藤型」か 歴代「代打の神様」との違いは

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伊藤雅哉
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 交流戦終盤、ここぞの代打で阪神・原口文仁捕手(29)の勝負強さが光った。球団には「代打の神様」の歴史がある。歴代の切り札と比較すると、打率は原口が大きく上回っている。背番号94が「神様」になるために、残された条件とは――。

 代打・原口がいる心強さを改めて感じさせる敵地6連戦だった。8日の日本ハム戦。同点の九回2死二塁から左越えの決勝二塁打を放つ。凡退していれば勝ちが消え、引き分けか負けだった土壇場。相手の抑えの杉浦を打ち砕き、お立ち台に立った。

 12日の楽天戦では九回無死満塁で押し出し死球。3点差に広げ、試合を決めた。普段は温厚で派手に喜ばない男が、ガッツポーズを見せた。

 2年前、大腸がんの手術から復帰したのが、この交流戦の舞台だった。6月9日の日本ハム戦で代打サヨナラ適時打を放ち、甲子園のお立ち台で「ただいま!」と叫んだ。実はその年の球宴前までは試合に出場しながら治療を継続していたことをその後、明かしている。

 病気を克服した原口は今、改めてこう語る。「少し時間が経つと忘れがちになることもあると思うんですが、原点というか、また野球ができている幸せ、当たり前のことを当たり前にできている幸せを持ちながらやっているつもりなので、それを見て何かを感じてもらえたらうれしい」

「新・代打の神様」襲名へ

阪神には歴代「代打の神様」がいます。川藤、八木、桧山……。原口が彼らに勝っているものは何でしょうか。逆に足りないものは? 記事後半で読み解いていきます。

捕手から代打稼業へ

 「打てる捕手」が立ち位置だった原口が本格的に代打稼業にシフトしたのが2018年。代打で4割4厘という驚異的な打率をマークした。この年、同い年でライバルの梅野隆太郎が完全に正捕手をつかんだ。原口は捕手の練習を続けながら、切り札としての地位を確立した。

 原口は「レベルスイングにこだわっている」と言い、打撃練習でも強振はしない。勝負は1打席。ストライクの球なら球種にかかわらず振っていく。直球も変化球も拾えるよう、バットの軌道の線でとらえることを意識しているのだ。

 阪神の「代打の神様」といえば川藤幸三、八木裕、桧山進次郎が代表格になる。その3人と比較すると、原口は代打打率で大きく上回り、唯一の3割台だ。本塁打は3人が2桁台で原口は3本。打撃スタイルの違いが見てとれる。

 八木、桧山は中心打者として活躍した後、代打に回った。一方で川藤と原口は、一度も規定打席に到達しないまま、代打に生きる道を見つけた。そういう意味で、原口は「川藤型の神様」になりつつある。広く人柄が知られ、ファンに愛されるところも似ている。

 先輩3人は優勝を経験してい…

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