「もう帰ろう」と言わなかった母 香川愛生さんを支えて

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聞き手・鎌田悠
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女流棋士香川愛生さん

 私が将棋と出会ったのは、小学3年のときでした。友だちにルールを教えてもらい、当時住んでいたアパートの下の階のおじいちゃんに将棋を習いました。母は、将棋のことはまったく知りませんでした。

 母は1人で私を育てながら経理の仕事をしていましたが、私が東京・千駄ケ谷の将棋会館にある将棋道場に通うようになり、会社を辞めて送り迎えをしてくれるようになりました。どうしても将棋が指したい私は、平日夜で対戦相手がいないときも、まだ見ぬ敵を求めてガラガラの道場に居残っていました。母も「もう帰ろう」とは言わず、一緒に待ってくれました。

 習っていた水泳や学習塾をやめたいと言ったときも、東京を離れて立命館大学に進学を決めたときも、結局は受け入れてくれました。強制すると逆にムキになってやらない私の性格を理解して、尊重してくれました。

 20歳のとき、初めてタイトル戦に挑戦しました。1勝1敗で迎えた三番勝負の最終日が、ちょうど母の誕生日。しかも会場は、母が送り迎えをしてくれた将棋会館でした。

 棋士にとって、タイトル戦は…

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