名物けしあんぱん「築地木村家」閉店 市場移転にコロナ

砂押博雄
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 ケシの実を使ったあんぱんなどが人気の東京・築地のパン屋さん「築地木村家」が17日、111年の歴史に幕を下ろす。地元の人や観光客らに長年愛されてきた老舗だが、店舗の老朽化や築地市場の移転、コロナ禍の長期化による業績低迷が、4代目窯元に閉店を決断させた。

 地下鉄日比谷線の築地駅から近い聖ルカ通り沿いにある「築地木村家」は、朝7時から閉店時間の午後8時まで客足が絶えない人気店。名物の「けしあんぱん」は創業当時からの味が受け継がれ、栗なども加えた計7種の定番あんぱんがいつも、お店のメインのテーブルに所狭しと並んでいる。

 もう一つの看板商品が4代目窯元の内田秀司さん(55)が考案した「牛すじ玉ねぎカレーパン」だ。国産牛の牛すじやバラ肉、タマネギを長時間煮込んだカレーパンは絶品で、揚げたての熱々を求めて訪れるファンも多い。

 登録商標もされた「厚焼き玉子サンド」は、築地場外にある卵焼きの名店「丸武」とのコラボ商品で当地ならではのパン。その他にも懐かしいシベリアパンなど、豊富な品ぞろえも人気の理由だった。

 創業者の内田永吉さんがあんぱんの発祥とされる銀座木村家で修業し、1910(明治43)年にのれん分け店として創業。銀座木村家のあんぱんには塩漬け桜がトッピングされているが、築地木村家のものにはケシの実を添えた。酵母は同店では酒種ではなく、ビールのホップを使っている。

 3代目窯元の時代には、永田町の衆院議員会館にも支店を出した。今はないが、議員会館店の店長の葬儀には、常連客だった小泉純一郎元首相も弔問に訪れたという。

 1日の客が1千人を超えることもあったが、2018年の築地市場の移転で売り上げが大きく落ち込み、昨春からのコロナ禍が追い打ちをかけた。最近は1日300人程度の来店客だったという。

 関東大震災後に立て直したレトロな外観の木造3階建ての店の老朽化も閉店を決断させた。2カ月後には解体される。

 秀司さんは「今後はこれまでの歴史と経験を何らかの形で社会に還元できれば」と話している。(砂押博雄)

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