先生に10年の「有効期限」 教員免許更新制って何?

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高浜行人 阿部朋美 三島あずさ 編集委員・氏岡真弓 デザイン担当・花岡紗季
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 学校の先生が教えるのに必要な免許に、期限があることをご存じですか? 12年前から続くこの教員免許更新制について、いま、大幅に見直す議論が続いています。そもそもどんな制度で、なぜ始まったのか。いちからおさらいします。(高浜行人、阿部朋美、三島あずさ、編集委員・氏岡真弓、デザイン担当・花岡紗季)

教員免許 誰が発行? どんな種類?

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免許更新のための講習 費用は自己負担

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「うっかり失効」などデメリットも

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失効は0・5% 「講習が負担」受け止めも

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海外では? 他の免許は?

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2009年にスタート 自民党の提案で議論始まる

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 教員免許更新制の導入が決まったのは2006年。文部科学相の諮問機関、中央教育審議会が導入を提言した。実は、この決定までは長い曲折があった。

 源流は、その20年以上前にさかのぼる。導入当時の中教審部会で委員を務めた八尾坂修・九州大名誉教授は「1980年代初め、自民党が免許の失効制度として提案したのが始まり」と説明する。免許をとっても教員にならない「ペーパー教員」対策として考えられたという。しかし、導入を求める声は主流にはならず、時が過ぎた。

 2000年、熱意や適性に欠ける教員が問題視されたことを背景に、森喜朗首相(当時)の私的諮問機関「教育改革国民会議」が提言し、導入論は息を吹き返す。その後、諮問を受けた中教審は、不適格教員を退場させる仕組みとしても検討したが、02年の答申で「更新時に教員の適格性を判断する仕組みは制度上取り得ない」と見送った。

 だが2年後、当時の文科相がまとめた改革案に導入が盛り込まれ、「教員の資質の向上のため」として再び諮問、06年答申で導入が決まった。文科省の元幹部は「自民党の目的は不適格教員の排除だったが、それでは制度化できないから教員の質の確保策に趣旨を変えた」と明かす。

 翌07年、第1次安倍政権の「教育再生会議」が講習を修了したかどうかを厳しく判定するよう提言し、修了を確認するための試験ができた。ただ、文科省はホームページで、制度について「不適格教員の排除が目的ではない」と説明。試験は形式的なものにとどまっている。

 導入から12年がたち、ほころびも目立ち始めた。更新期限を忘れたために職を失う「うっかり失効」が相次ぎ、教育委員会などが行う研修と内容が重なるとの指摘が出た。教員の長時間労働が問題になるなかで、夏休みなどに自費で受ける講習が、負担増に拍車をかけているとの声もある。

 こうしたなか、萩生田光一文科相は今年3月、「制度の抜本的な見直し」を中教審に諮問。中教審の委員会では、廃止の検討についての言及もあった。近く、更新制の今後について方向性が示されそうだ。

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