毎日「ぼっち」 コロナで世界が追いついた

聞き手・稲垣直人

 感染の拡大で、家族や友人との旅行や食事会はめっきりなくなりました。あぁ、寂しい……と思う今こそ、ひとり=ソロの時間を楽しんでみるのもいいかもしれません。「ソロでいこう」初回は、コロナで「ぼっちを良しとする僕の価値観が推奨されるようになった」という作家の賽助(さいすけ)さんです。

リレーおぴにおん「ソロでいこう」

 昨年秋、自分の1人好きの生き方を書いたエッセー「今日もぼっちです。」という本を出したところ、さまざまな反響をいただきました。「僕もソロ人間です」という共感、少数ながら「自分もぼっちなので、読んでいて辛(つら)いです」という感想もありました。

 小さい頃は1人好きという自覚はなかったのですが、大学のとき所属していた劇団で気付きました。劇団員が自分の人間関係を駆使し、いかに多くのお客を劇場に呼べるかを比べた時、自分には友だちが少ないな、と。友だちがどれだけ多いかで役者の価値が決まるのか?と当時は思いました。

 その後、一つの転機がありました。深夜ラジオを聴いていた時、タレントの伊集院光さんが「自分は友だちが少ない」と言いつつ、それを面白おかしく話していたんです。普通なら悲しい話かもしれませんが、「ぼっちは武器になるのでは?」と思い直しました。

 それ以降、ぽつぽつと人前で自分のぼっちエピソードを披露すると、それを面白がってもらえるようになりました。今でこそ、ソロキャンプや1人焼き肉などと肯定的に言いますが、約10年前の当時、「ぼっち」は「寂しい」と同義だったように思うので、「お1人様」な過去を公に披露することを珍しがってもらえたのかもしれません。

 とはいえ、「みんなで集まれば楽しい」という「陽」の意見は、「1人は気楽」という「陰」の意見よりも、賛同は得やすいでしょうね。人と人が「つながる」ことは、SNSでますます強いられている気もします。

 そんな僕も「飲み会は嫌い」と公言していますが、だからと言って全く誘われなかったら、少し寂しい。大切なのはバランスで、お天気のように「時と所により、ぼっち」がちょうど良いのではないでしょうか。

 そして今、コロナ禍の自粛で「ぼっち」を良しとする僕の価値観が推奨される世界になろうとは……。「孤独は苦手」という人も、新たな自分を発見するチャンスだと思います。

 ぼっちは一見ネガティブなイメージですが、実はポジティブな何かに変わりうる。僕自身、それをネタに本を書いて、こうやって取材に来ていただいたのですから。(聞き手・稲垣直人)

 YouTubeのゲーム実況グループ「三人称」のメンバーとしても活動。その他の著書に「はるなつふゆと七福神」「君と夏が、鉄塔の上」。